「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

ロード・インフェルノ のレビューです(総合評価C +)

(画像:Amazon商品ページより引用)

こちら、路上で制限速度ぴったりで走ってるジジイを煽ったら、その相手がサイコパスだった……という映画です。

国籍……オランダ
制作……2019
販売……ニューセレクト

まずは今作のあらすじ&予告編からどうぞ。

【予告編】

【あらすじ】

「ハンスは家族を連れて実家へ向かうが、出発が遅れたことに腹を立てていた。そんな中、前方を走る白いバンがゆったりと走行していた。苛立つハンスはあおるように運転する。バンもさらにスピードを落として対抗してくるが、ハンスは車線変更をしてバンを追い抜き、その際に運転手の老人に挑発的なポーズを取る。溜飲が下がり快適に車を走らせるハンスだったが、バックミラーには老人が運転する白いバンが不気味に映っていた…。」
Amazon商品ページより引用)

ストーリー……C
キャラクター… C
設  定………C

総  合………C +
オススメ度……D

【良い点】
・それなりにハラハラするストーリー

【悪い点】
・登場人物バカしかいない
・結構人を選ぶのでオススメしがたい部分がある

煽った相手がサイコパスだった系スリラー?映画です。ストーリー自体は展開の速さも悪くなく、それなりにハラハラする部分はあるので結構楽しめるのですが、サイコパスに追われる煽り運転野郎の車に小さい子供が2人も乗っているという事情から、ちょっと試聴をお勧めしにくいんですよね……。ただただ娘2人が可哀想で。また、煽り野郎を制裁してスカッとジャパン、という展開を期待するとなかなか肩透かし喰らう部分もあるため、「思った感じじゃねぇな」となる可能性も割とあります。ご視聴は計画的に。

【以下、ネタバレ注意!】

煽り運転は、やめようね!

さて今作ですが、あらすじの通り、煽り運転かました相手が運悪くサイコパスジジイでつけ狙われることになりました! というお話です。
サイコパス VS 煽りクズ野郎──うーん、どっちもキ○ガイ、引き分け!w

では早速、詳細な内容を見ていきましょう。とにかくこの映画において重要なのは、ストーリーの良し悪しです。

今作は先述の通り、煽ったら相手がサイコパスで付け狙われることになった、というだけのストーリーなのですが、動機も展開も単純明快であるからこそ、余計なことを考えずに純粋にスリラーを楽しむことができます。まあ相手がサイコパスとはいえ、非はどう考えても煽った主人公側に全部あるんですけど、それ抜きに考えても、やばい奴に車でつけ狙われるってのはやっぱ単純にハラハラしますめぇ。逃げても逃げても執拗に追いかけてくる上、最終的には実家に先回りまでかまして来ますからね。その執念深さにはなかなかゾッとさせられました。

ですがこのジジイ、サイコパスだからか老害だからか結構オツムがよわよわで、殺しに成功する前に逮捕不可避の無茶を連発します。例えば、思いっきり一般車走ってる道の路肩で犯行に及ぼうとする、人の目があってもおかしくない昼間の住宅街にも関わらず殺害薬剤ぶっかけようとする、相手が携帯持ってて即通報の危険があるのに問答無用で追いかけ回すなどなど、「こいつ自分から捕まりに行ってんじゃねーのか?」という無茶っぷり。

ですがこの映画の凄いところは、こんだけ無茶連発するジジイがなぜ警察に捕まらずに犯行を出来るのか、ちゃんと説明してくれるところなのです。それは、ジジイが単純にクソ短気で、「煽られた=絶対殺す」なのではなく、ちゃんと相手を選んで犯行に及んでいる、という設定がある事。これがあるかないかで、この割りと無茶なストーリーを受け止められるかどうかに雲泥の差がありました。

そう、仮にターゲットに中学生程度の知能があれば、ジジイは度重なる無茶とガバの前に犯行失敗即逮捕不可避なのです。それを分かっているからか、ジジイは煽り運転を受けた後、すぐに殺しにかかるのではなく、ある程度相手の知能を見極めるフェーズに入ります。それは、相手にストーカーをかました後「謝るチャンスをあげる」というもの。

このジジイ、まず煽り運転を受けた後、主人公たちの車の後をつけ、高速のパーキングで接触を図ります。そこで色々口論をふっかけた後、主人公に対して「私に謝れ」と迫るのです。もちろん無駄にプライドの高い主人公はこれを拒否し、パーキングを去ります。ですが、この後もジジイは下道まで追いかけてきて、路肩に車を止めると「謝るなら見逃す」と再び謝罪を要求。再三の謝罪要求にも応じない傲慢な主人公に対して、初めて犯行を決意する、という流れです。

この、「誰彼構わず煽って来た相手を見境なしに殺すのではなく、ちゃんと相手の知能指数を図る」という描写が入るだけで、主人公がどれだけアホな行動をとり、ジジイの行動がガバガバでも、許せる下地が出来るんですね。すなわち「こんなん主人公がアホやから話が成り立ってるだけやん」となりそうなところを、ジジイがちゃんとアホだけを狙って犯行をしている、というワンクッションを挟み、ストーリーを受け入れやすくさせている。この構図にはちょっと感動しました。まあどう考えても、まともな知能指数を持った人間なら、煽った相手が高速のパーキングだけでなく、下道にまでついて来て再三謝罪要求して来たら、普通は身の危険を感じて形上だけでも謝るでしょ。この主人公、それに対して逆ギレかました挙句、文句あるなら警察に通報してみろよ、とジジイを煽り、あろう事か下道までストーカーしてくるやべー奴に自分の携帯を渡すようなどうしようもないアホですからね。そりゃジジイのガバガバな犯行も上手くいくわ、主人公がどうしようもなくアホなんですもの。

つまりこの映画、主人公からすると「煽ったジジイがサイコパスだった」となるわけですが、ジジイからすると「煽って来た相手がアホだった」となるため、ガバガバ VS アホという次元で奇跡的なバランスを保っているのです。これ、ジジイの犯行が完璧ならあっという間に映画が終わってしまいますし、主人公に人間並みの知能があればジジイが即逮捕されて終わってますからね。ぶっちゃけストーリーに対するツッコミどころは山ほどあるんですけど、主人公があまりにもアホなことに加え、そもそもジジイがアホだけを狙い撃ちにしているという描写がちゃんと挟まる事で、なんか許せてしまいます。

まあそうは言っても、今作はあまりにも登場人物にアホしかいないので、苦痛な人にとってはなかなか苦痛だとは思います。そのせいで、ちょっとお勧めしにくいんですよね。主人公は、ストーカーしてくるジジイ相手に無警戒に携帯は差し出すわ、携帯という個人情報の塊を盗られているのにのこのこ実家に帰るわ、もう自分からピンチになりに行ってるだろと言わざるを得ないような頭の悪さですし、妻は妻で自分たちが逃げるためなら平気で人を轢こうとする上、それを止められると逆ギレをかますクズ、サイコパスもサイコパスで計画性皆無で犯行内容ガバガバと、まともな知能のキャラが見事に不在ですからね。認知症の父親がマシに見えるレベルのアホ揃いですよ。

また、今作をお勧めできない理由がもう一つ。それは、ジジイを煽った主人公側の車に、無関係な幼い子供が2人も乗っている事なのです。ぶっちゃけこの2人からすると、父親と母親がクズなだけで、自分たちは完全に巻き込まれただけですからね。この子たちが乗っているせいで、「いいぞサイコパス、煽りクズ野郎一家なんて殺ったれ殺ったれ!」と応援しにくいんですよね、ただただ巻き込まれた子供が可哀想で。

さらに、煽り運転がテーマの割には、意外にも車を使った追いかけっこ的なシーンが少ないというのも若干の減点ポイントでした。

と言うわけで総評ですが、個人的にはストーリー展開は割と好みで許せたんですが、なんせアホしかいないので見ていてイライラする人はイライラするでしょうなぁ、と言う感じの映画です。もうあまりにアホすぎてわざとやってんじゃねーのかと言いたくなるシーン多数なのは問題なのですが、まあ煽り運転してくる人種なんて人間並の知能は持っていないので、案外こんなもんかもしれません。ただやはり、幼い子供がいる家族設定にしてしまったせいか、「煽り運転してくるクズ野郎をサイコパスが制裁!」というスカッとジャパン要素は結構薄いため、そこは注意が必要でしょう。

みんなも、煽り運転は、やめようね!

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