「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

カイジ 動物世界 のレビューです(総合評価B−)

(画像:Amazon商品ページより引用)
意味分からんタイトルですが賭博黙示録カイジの実写版映画です。中国製作。
何でこんな意味わからんタイトルなん……(困惑)
 さて今作ですが、あの「カイジ」の限定ジャンケン編の中国版実写化映画です。ネトフリ で見たんですが、そっちには「動物世界」というタイトルだけだったのでカイジの実写版だって見るまで気が付かなかったぞ。ちなみに主人公の名前がジョン・カイジです。
 なお、内容を見ていただければ分かるんですがもう見るからに明らかに金かかりまくってる(製作費70億円らしい)ので、「これB級映画か?」と言われると違うんですけど、いいんです。細けえことは。
 さて、意味分からんことも多いでしょうが、とりあえずは予告編&Filmarksさんからあらすじをどうぞ。
【予告編】
【あらすじ】
定職にも就かず自堕落な日々を過ごしていた青年カイジは、ある日友人に騙され借金を負う。借金額は5300万円。カイジは負債者に借金一括返済のチャンスを与えるという、「宿命」の名を冠すギャンブル船「デスティニー」に乗り込む。そこで行われるのは、カード12枚を使った「限定ジャンケン」。謎の組織が裏で取り仕切るそのギャンブルは、うまく勝てば借金は帳消しだが、負ければ命の保障はないというものだった。「負け組」のエース、カイジ。命を賭けた究極のゲームの幕が今開く。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)
ストーリー……B
キャラクター…C
設定……………C
総合……………B−
オススメ度……B
【良い点】
・ギャンブル部分だけを見ればカイジの実写化として完璧
【悪い点】
・オリジナル要素がいらない
 タイトルこそあれですが、カイジの限定ジャンケン編実写化としては満点に近いレベルの完成度を誇る作品です。余計なオリジナル要素はありますが、カイジ知らなくても充分楽しめるのでオススメです。
【以下、ネタバレ注意!】
 「動物世界(Animal world)」という謎タイトルの今作。一応、このゲームではなんか動物的本能が優先されるから的な説明があるんですが、にしたってこのタイトルはちょっとどうかと思う今日この頃。
さて、今作はNetflixで視聴しました。吹き替えは……あったかな、字幕だけだったと思います。 では早速、中身のほうを見ていきましょう。いつもなら良い点悪い点からみていくのですが、まずは今作のあらすじを紹介するところから入っていきたいと思います。

 さて、フリーターで自堕落な生活を送っている主人公のカイジ君。こんな彼には、病気で寝たきりの母親と、バブみを感じる幼馴染で看護師の彼女がいます。彼女の勤め先の病院に母親を預け、金がなくなっては幼馴染に金を借りる人間の屑な毎日を送るカイジ。そんなある日、彼は友人に騙されて多額の借金を負ってしまいます。金貸しのヤクザっぽいおっさんたちにつかまり、「デスティニー号」という豪華客船で開催される「限定ジャンケン」というギャンブルゲームに参加することになるカイジ。勝てば借金は帳消し、負ければ死が待っている状況で、カイジは生き残ることができるのか……? 的な映画です。

 ちなみに、ここで原作を知らない方のために、今作の要となるギャンブル、限定ジャンケンの解説を簡単にしようかな……とも思ったんですが、ぶっちゃけここで話すとクッソ長くなるのに加え、限定ジャンケンの解説や説明自体は詳しく解説してくれているサイトが山ほどあるので、興味のある方は検索してください。以下のレビューを読むにあたっては、「限定ジャンケンって名前のギャンブルで戦うんだな」くらいの認識でいていただければ充分です。
 さて、ここまで読んでいただければ、原作勢の方ならば気が付くはずです。「だいぶ原作と違くね?」ということに。そう、原作のカイジくんは、それはもう絵にかいたような屑人間で、基本的にギャンブル好きな自堕落野郎として描かれており、楽しみといえば金持ちの車にイタズラして回るくらい。病気がちな母親はおろか彼女(美心以外)なんているわけもなく、同情できる要素は一切ありません。それに比べれば今作のカイジ君には、割と同情を誘う要素があります。特にデカいのが幼馴染の彼女の存在で、これがいるかどうかで限定ジャンケンで生き残るための動機の部分が結構変わってくるので、心理的にちょっと原作とは違う、という部分もあります。

また今作のカイジ君、過去に暴力行為に対するトラウマ的なものを抱えており、時折周りの他人がモンスターに見えたり、自分がピエロの姿になってそいつらを処刑して回ったり、何でもないシーンで突然カーチェイスして黒服たちの追撃を振り切ったりなど、ありとあらゆる種類の妄想をしてしまうという癖があります。そして時には感情を抑えきれず、妄想で人を殴ったと思っていたら実は現実でも殴ってました、というような、感情の抑制がうまくできないという要素も追加されています。この妄想がまたVFXモリモリの盛りで、視覚的な出来栄えはかなりいいんですが、これもまた原作にはない要素です。

では、この辺を踏まえたうえでさっそく良い点悪い点を見ていきましょう。まずは良い点から。

今作の良い点は、限定ジャンケン編の実写化としてはもはや満点レベルの出来栄えに仕上がっているということです。

先のあらすじでもお話ししてきた通り、今作には漫画版カイジにはないオリジナル要素がかなり強めに織り込まれています。そのため、これをカイジの実写版としてみると結構違和感が強い部分が多々あるんですが、こと今作で1番の目玉要素である限定ジャンケン部分の出来栄えについてだけを見れば、もはや完璧と言わずしておれません。

 あんまりここの部分を話すと、今作のネタバレどころか原作のネタバレにもなってしまうのでどうかな、とも思うのですが、もう本当に限定ジャンケンのレベルがとにかく高い。何がすごいって、ほぼほぼ展開が原作通りなんですよ。カイジの実写版というと、藤原竜也がカイジをやってた日本版の方が馴染み深いと思いますが、ぶっちゃけギャンブルパートの原作再現度で言えば、端折り端折りで詰め込みまくった日本版の比ではないくらい、今作のレベルはずば抜けて高いです。
 次から次へと展開を動かす、ストーリー展開重視の姿勢を見せた日本版と違い、限定ジャンケン一本に焦点を当て、2時間じっくり使って限定ジャンケンの攻略だけを描いたのが今作です。まあ、どちらが良いとか悪いとか言う話ではなく、どちらにも良い部分悪い部分はあるんですが、やはり「原作の様に、1つのギャンブルに対して戦略を練り、一歩ずつ攻略法を見つけて突破する面白さ」に関して言えば今作の方が格段に上です。そのため、日本版実写カイジは原作を知らない初見の人が見ると、ギャンブルパートでは何が起きてるのかなんかよく分からんことになってましたが、今作はもうとにかく展開が原作通りに進んで行くのに加え、カイジが取る戦略やそれがもたらす効果などに関する解説も原作よろしくかなりしっかり説明してくれるため、初見でもわかりやすく楽しみやすい内容になっていたかと思います。
  まあ、どうしても時間の都合上か、金の借り方だとかリピーターに関する設定だとか、原作と差異のある部分はありましたが、それを差し引いても限定ジャンケンの本質となる部分の戦略や解説については、ほとんど完璧に出来ていたと言っても過言ではなかったかと思います。
 ここまで読んで、原作を知らない人にとっては何が言いたいのかよく分からない部分も多々あったかとは思いますが、詰まるところ今作は面白い原作の1番面白い部分(ギャンブルパート)を面白いままにきちんと再現した作品となっているので、初見で見てもちゃんと面白い内容になっているということです。これさえ伝わればそれでいい。
 では、良い点は以上でした。続いては悪いと思った点を。今作の悪い点は、オリジナル要素いらないんじゃないの、ということです。
 あらすじ紹介でも述べましたが、今作はギャンブルパートの出来こそ原作にかなり忠実に作られていますが、それ以外の部分ではむしろオリジナル要素の方が強い、という構成になっています。しかもこのオリジナル要素というのが、原作にはない恋人持ち出してきたり製作国に合わせて役名改変する、程度のレベルで済んでおらず、原作には一切ないアクションパートをぶち込んで来たり、意味なくカーチェイス繰り広げてみたりと、もはや作品ジャンルが揺らぐレベルの大幅改変が加えられています。そして残念なことにこの改変、ぶっちゃけ邪魔。
 まあ、もちろん好みはあると思いますが、特に序盤に差し込まれるこれらの描写がぶっちゃけテンポを殺しており、本題のギャンブルパートに突っ込むまでの繋ぎにもなりきれていないところが痛いです。まあ確かに題材的に絵面が地味になりがちな作品なので、VFXを駆使したパートを入れて視覚的に華やかにしたいという意図は分かるのですが、それにしたってカーチェイスの妄想するシーンとかは見てる瞬間に「ここ妄想やろ」と一瞬で分かる上に無駄に長いんで、もう本当に邪魔でしかなかったですね。
 時々相手のことが怪物に見えるという描写も、人間のドス黒い部分が見えるギャンブルパートではまあまあいい味出してましたが、別に見えるだけで良くて戦う必要までは全然なかったんで、そういう意味ではピエロに成り切って怪物切り裂くパートも丸々いらないですね。ぶっちゃけギャンブルパートにとっとと突入して、キャラ同士の駆け引きやギャンブル中の心情表現の部分に尺と金を使って欲しかった。対戦相手を怪物に見立てるという発想自体は、映像作品的で結構好きだったんですけど……。
 というわけで総評ですが、まあ、面白いことは間違い無く面白いです。特に、「限定ジャンケンの実写化」として見れば、再現具合はぶっちぎりのトップ。視覚的な説明も良くしてくれるので見ていてなかなか分かりやすく、初見でも充分楽しめるかと思います。反面余計な要素も多いので、好みはなかなか分かれるところかと思います。個人的にはオリジナル要素は微妙だったのですが、これがまた面白いという意見も多いので試しに見てみるのも良いのでは?
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