今回レビューするのはこちらの映画。見ての通りのデスゲームものです。でも、ぶっちゃけ思ってた感じのものとかなり違いました。
それではまずは、今作のあらすじ&予告編からどうぞ。
【あらすじ】
「朝。まもなく始まる学園祭の準備で慌ただしい日々を送る聖新学園高校3年C組の生徒たち。担任教師・下部(中村獅童)に視聴覚室に呼び出された樫村怜奈(橋本環奈)ら36人は、突然、不気味な映像を見せられる。それは≪自殺催眠≫の暗示だったー。
その催眠発動(自殺)のシグナルは、全部で100種類。「遅刻をする」「スマホを使う」「涙を流す」……何気なく普段行っていた行為が死を招く。学校から出ることも、外部に助けを求めることもできない。死の暗示を解く方法はクラスメイトの死のみ。最後に生き残った者だけが、自殺催眠から逃れられるというのだ。
シグナルを発動させてしまった生徒たちが次々と壮絶な死を迎える中、その謎を明かされないまま、下部は教室の窓から飛び降り、突然の死を遂げてしまう。
絶望的な状況のもと、人間の醜い本性が次々と暴かれ、やがて、生き残りを賭けた壮絶なデスゲームへと発展していく。タイムリミットは夜明けまで。樫村は全員が生き残る方法を見つけようと、この見えない恐怖に立ち向かうがー。
催眠を解くのが先か、自分以外のクラスメイト全員の死を見届けるのが先か!?狂気と絶望のデスゲームの結末とは……!?」
(公式サイトより抜粋)
【予告編】
ストーリー……D
キャラクター…D
設 定………E
総 合………D-
【良い点】
・設定は面白そうだと思った(小並感)
【悪い点】
・開幕以降ずっと下火のまま盛り上がらない展開
・キャラクターの頭が弱すぎる
・誰一人本気なやつがいないせいでデスゲームとして成り立っていない
立ち上がりは上々、それ以降はひたすらに下火で盛り返してこない残念作。生徒全員に自殺催眠をかけるっていう設定はかなり面白そうだったのですが、それが活かされていたかというと全然だめでした。見終わった後の率直な感想は「何がしたかったんこの映画?」
【以下、ネタバレ注意!】
おうおういい加減デスゲームの主人公を甘ちゃんでうるさいだけの喋るゴミにするの法律で禁止しろ。
というわけで今作、設定だけは面白そうな自称デスゲーム映画となっております。ですが、ぶっちゃけデスゲームに必須な駆け引き的なパートがあまりにもお粗末、かつどいつもこいつも何考えて行動してるのか全く分からない頭のネジが緩み切ったポンコツ太郎しかいない上、本気で目の前の事象に取り組もうとする奴が皆無なせいで、そもそもデスゲームとして成立していません。
なお、今作には原作漫画があるらしいのですが、私はそちらは未読でございますので、あくまでこのレビューは原作未読視点で、この映画を初見で見た時の、映画単体に対するレビューだということをご容赦ください。
それでは早速、詳細な内容についてお話ししていきましょう。まずは良い点から!
今作の良い点は、生徒全員を自殺催眠にかけデスゲームを強要する、という設定自体は実に面白そうだという事です。大抵この手のデスゲーム映画において、ゲームを強要するアイテムといえば首輪が定番ですが、今作ではこれが催眠に置き換えられています。つまり、ルールを破った場合首輪が爆発して死亡……するのではなく、催眠によって自殺してしまう、という具合ですね。これの何が良いかというと、死亡シーンの絵面がワンパターンにならないんですよ。首輪で死亡系の映画というと、どうしても死亡シーンは爆発が大多数を占めるため、絵面が一定で飽きが来やすいのですが、その点今作は自殺なら何でもいいわけですからね、飛び降りや切腹、舌を噛み切る、リスカ、首吊り、自分で首を絞める……などなど、バリエーションがとても豊富。これは結構上手いなと思いました。
というわけで、褒めパート終了です。さて、総合評価を見てもらってもお察しの通り、以下は基本ずっと酷評パートが続きます。もしこの映画のファンの方がいたらごめんなさい、回れ右してサイトを出ずに、折角なんで全部読んでってください。対戦よろしくお願いします。
では、今作の悪い点について。いやもう今作のダメな点については山ほど言いたいことはあるのですが、出来るだけ簡潔にまとめると、開始以降永遠に右肩下がりで全く盛り上がらない展開、そしてキャラクターの動かし方が下手すぎてデスゲームとして成立していないこと、この二つに集約されるかと思います。
今作は前述の通り、集団自殺催眠という設定だけは面白そうなのに加え、立ち上がりはなかなかスピーディなため、開幕からしばらくの間はそれなりの期待を持って視聴する事ができます。しかし、ご都合の良い展開と失速感の前に、その期待はへし折られ、興味は段々と失われ、ただ惰性で見ているだけのような状態になり、最終的にはただ画面を眺めているだけ……というようなことになってしまいました。設定は面白そう、かつ立ち上がりは良かったのに、なぜこんなことになってしまったのか。その大きな原因として、私はキャラクターの動かし方がクッッッッッソ雑で下手だから、という説を推したい。
今作に登場するキャラクターは主に3種類。まずは主人公をはじめとした、「みんなで協力して催眠を解く方法を探そうよ」なゲーム否定派。また敵役ポジである「最後の1人にならないと催眠が解けないのだから、周りを出し抜いてでも自分は生き残ろう」とするゲーム肯定派。そしてモブをはじめとした「なんか強そうな方の指示に従っとくか」な脳死派です。まあ、この辺までは大体のデスゲーム作品でよくある感じなので全然いいのですが、問題となるのは今作のこの3タイプのキャラクター、「ゲームに従うにしても従わないにしても、とにかく本気で生き残ろう、この状況を何とかしよう」という気概をものの見事に誰からも全く感じ取れないのです。状況に左右されるだけの脳死派は勿論のこと、ゲームに抗い全員生存の道を探る主人公たちからも、ゲームに従い周りを出し抜こうとする敵役からですら、もうどのキャラからも全く本気が感じられないんです。
例えば主人公たち。彼女たちは、口では「みんなで助かる方法を探そう」と言いはするのですが、じゃあ具体的に何かしたのかと言われると、マージでなーーーんもしてません。誰か死んだらその場に駆けつけ、お気持ち整理している間に敵役に先手を打たれて仲間から犠牲を出し、またお気持ち整理してる間に敵が先手を……の繰り返しで、常に相手に対して後手後手に回る一方。しかも、肝心の催眠を解く方法を探る事にまで全く手が回っておらず、口ではみんなで助かろうだの何だの偉そうなことを言いながら、それを叶えるための努力、情報の収集などをなーーんにもしていないのです。そのため、「お前ら口だけは偉そうやけど、本気でこの状況を何とかしようって気があるんか?」と思ってしまう。みんなで助かりたい、ならどんなことをしなければならないのか、どうすれば催眠を解く手がかりが得られるか、これ以上犠牲者を出さないためにはどうするか、ゲームに乗り気な一派への対処はどうするか……本気で生存を目指すなら、考えること、決断しなければならないことは山ほどあるはず。ですが彼女たちは、常に敵役の後手に回っているため場当たり的な対応しかできず、ぶっちゃけ理想論を語るだけの喋るゴミと化してしまっています。
しかも敵役は敵役で、単純に立ち回りが下手&頭が弱すぎて、本気で生き残るために周りを出し抜こう、自分以外全員殺してやろう、というやる気がイマイチ伝わってこないのが問題。無意味に有益な情報を開示してみたり、一方的に全員殺せる場面に出くわしたのに余裕かましていたせいで数名取り逃がしてみたり、突然よく分からない理由で死のうとしてみたりなど、もう全てにおいて思考や行動が中途半端すぎていちいち彼の行動の動悸が掴めず、「結局お前何がしたいん?」となってしまっています。
そんな、敵も味方も何がしたいのかよくわかんない状態が続く中では、当然シグナルを使った高度な駆け引きや情報戦、心理戦などが展開されるわけもなく、常に後手に回る主人公と何したいのかよく分かんない敵役がわちゃわちゃしてるだけのお遊戯会状態になってしまっており、もはやこれはデスゲームとして成り立っているのか、という前提すら怪しく思えてくる出来栄えに仕上がってしまっております。
というわけで総評ですが、出落ち。結局はこれに尽きるかと。出だしが一番面白くて、あとは右肩下がりという、映画としてあまりに痛い構成なのは残念としか言いようがありません。他にも、ラストシーンおかしいだろとかどう考えてもシグナル破ってるのに死んでねーやついるじゃねーかとか敵役の最期あっけなさすぎやろとかとか、言いたいことは色々あるんですけど、ぶっちゃけ「登場人物全員、本気のやる気が見えないせいで一生盛り上がらない」という、問題の前には霞むなと思ったので、あえて割愛しております。
では、今回は以上です。アマゾンプライムに来ているので、気になった方、「そんな言うほど酷くもないやろ」と思われた方は、ぜひご視聴されてみてはいかがでしょうか?