あまりに詰め込みすぎな内容に、これには流石にテンポ厨の私も苦笑。
制作……2019
販売……アルバトロス
それでは、まずは今作のあらすじ&予告編からどうぞ。
【あらすじ】
「妻を亡くした医師のアダムは、新たな生活を始めるため、ひとり息子のミゲルを義父母に託し引っ越しの準備をしていた。時を同じくして、ベネズエラの首都カラカスに原因不明のウイルスが蔓延。感染した人々は、狂暴化し人々を襲い始める。アダムは、避難キャンプでウイルスの解明に努めるが、そこも感染者の大群に襲われ壊滅してしまう。軍の救援によりなんとか生き残ったアダムは、混沌とした街でミゲルを探しに向かうが…。」
(Amazon商品ページより引用)
【予告編】
ストーリー……C
ゾンビの質……B
キャラクター…C
設 定………D
総 合………C+
オススメ度……C
【良い点】
・展開がどんどん動くので飽きない
・ゾンビの出来が良い
【悪い点】
・あまりにも内容を詰め込みすぎて盛り上がりに欠ける
・スーパーご都合主義
ベネズエラ産全力疾走系ゾンビ映画です。基本私は展開の早い映画、次々と場面が動く映画は高評価傾向にあるのですが、これはあまりにも内容を詰め込みすぎと言わざるを得ない。あまりにも詰め込みすぎて明らかに90分という枠内に収まっていません。ゾンビの出来はなかなかよく、飽きないよう工夫もされているので、ボーッと見る分にはなかなか楽しめるかと思います。
【以下、ネタバレ注意!】
学生が深夜テンションで一晩でレポート書き上げたはいいものの、規定文字数大幅超過してたから頑張って納めたはいいが、推敲一切しないまま提出した、そんな感じの映画。つまるところ、言いたいこと詰め込むだけ詰め込んどいて内容の精査マトモにしてねぇだろお前!?
と言うわけで、早速今作の内容を見ていきましょう。まずは良い点から。
今作の良い点は、ゾンビのクオリティが高いこと、そして何より、次々と場面が切り替わる飽きさせないストーリー展開です。
まずゾンビ映画として重要なゾンビの出来についてですが、ここの部分は特に問題ない、むしろB級ゾンビ映画としては結構なハイクオリティとなっていました。今作はいわゆる全力疾走系ゾンビなのですが、メイクのノリもなかなか良く、動作も機敏で迫力もそこそこ、と充分すぎる出来に仕上がっています。場面によっては同時登場数もかなり多く、襲撃シーンだけを見ると緊迫感の演出にきちんと貢献していました。
また、今作1番の特徴とも言える、ハイスピードで次々と切り替わるストーリー展開についても触れておきましょう。この映画のメインストーリーは、医師の主人公が片田舎に広がるゾンビの脅威から逃れつつ、嫁の実家に預けた息子を迎えにいくために長距離を旅する、ロードムービーに近い構成となっています。その最中、ゾンビの襲撃を受けたり生存者を拾ったり、このゾンビウィルスの解明に貢献したりと、実に様々なイベントが次々に起きるのが今作最大の特徴。良く言えば息もつかせぬ展開の連続で、特に中盤以降は飽きずに視聴できました。これはテンポ厨の私にとって、非常に嬉しい配分でした!
──と、言えたらよかったんですけどね。いや、実際テンポよく話が次々展開されていくこと自体は大変好みで評価出来るのですが、今作はそれがあまりにも極まりすぎていて、流石に一本に内容詰め込みすぎだろ、と言わざる得ない事態に陥っています。これこそが、今作の抱える問題点です。
まずこの映画の主要イベントを列挙しますが
片田舎で感染拡大、主人公移動を開始(ここまでで40分経過)
→立ち寄った検閲場がゾンビの襲撃で壊滅
→立ち寄ったモーテルで生存者と遭遇、ゾンビの襲撃で壊滅
→隔離地域で軍隊や研究者たちと邂逅、ゾンビの襲撃で壊滅
→二手に分かれ、主人公は単身息子を探しに。軍人と研究者の生き残りは研究所へ
→なんだかんだあってエンディング
と、全体90分の中にこれだけイベントが詰め込まれています。しかも移動開始までで40分は使っていますから、実質50分くらいの中にイベントこれだけ詰め込みですよ。
でもまあ、「1時間の中にこんなもんなら、多少多いかもだけど普通では?」と思われるかもしれませんが、これ主要イベントだけですからね。今作にはこの他にも、ゾンビとの戦闘や生存者との出会いなどのサブイベントが合間合間に詰め込まれているため、イベントが完全に渋滞を起こしています。そのせいか、主要イベント含め一つ一つの展開が実に希薄。検閲場やモーテル、隔離地域へのゾンビ襲撃などの一見見せ場に思える箇所も、主人公到着後間もなくゾンビが襲来→壊滅、と言う展開が繰り返されるためなんとも味気なく、尺の都合のためかかなり呆気なく壊滅してしまうためイマイチ盛り上がりに欠けます。
また、その辺にかかる時間を削ってまで挿入したサブイベントも、旅の途中で生存者を拾うが次の展開ではサラッと死んだり、キ○ガイ親子から夫婦を救うが即ゾンビの襲撃を受け死なせる、助けた息子を賊に攫われそうになるが何事もなくそのままエンディング突入など、「いやこのシーンいる?」という展開がかなり多いです。正直、こんな展開入れる時間あるんなら、隔離地域での戦闘とかウイルスの研究描写をもっとしっかり書き込んでくれよ、と思いました。
詰まるところ、今作はとりあえずやりたいことをあれもこれもと全部詰め込んだ結果、一つ一つの展開をしっかり書き込む時間がなくなり、淡々とした展開がポンポン続いていく、という感じの内容となってしまっております。個人的には、イベントの数をもっと絞って、一つ一つをしっかり書き込んでいく方が見応えもあってよかったと思うのですが……。
また、終わり方も「いやー息子噛まれてたけどなんか10歳以下の子供には抗体あったんで大丈夫でしたわ、子供から作ったワクチン配ってとりあえずめでたしめでたし」と言う、何とも投げやり間満載のスーパーご都合主義エンドなのも盛り上がりの欠如に拍車をかけます。
総評ですが、何回も言いますけど流石に詰め込みすぎ、その一言に尽きる映画です。テンポの速い作品は大歓迎ですが、その分内容が薄くなってもいいわけではない、と言うことを教えてくれる作品でした。ゾンビの出来始め光る部分はあるのですが、その分マイナス点もあり素直に褒められない、という印象が強く残る映画です。まあそれでも、あまり深く考えずに暇つぶしに見る分にはわりといい映画だと思うので、ご自分に合いそうだと思ったら見るのは全然アリだと思います。
それでは、また次回。