「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

ブラインデッド のレビューです(総合評価C-)

(画像:Amazon商品ページより引用)

盲目×妊婦が主役のゾンビ映画!? うわぁ、こんなの絶対に面白いじゃん!

いいことを教えてやる。この世に絶対などない(白目)

というわけで、今回見たのはコチラの映画です。盲目のおっさんと妊婦さんが、2人でゾンビ蔓延る舞台からの脱出を目指す、という内容。それでは早速、詳細な情報を見ていきましょう。

国籍 カナダ
制作 2018
販売 ニューセレクト

【あらすじ】

「盲目の男ベンは、事故で往生した救急車の中で目が覚める。さらに手錠がはめられており、自分がなぜこんな状況に陥っているのか全く記憶がない。手探りで無線を探し出しSOSを発信するが、全く応答がない。仕方なく車を出て歩き始めるが、何者かに追われている感覚がする。なんとか廃屋の中に逃げ込むが、そこにも狂気の気配が充満していた。瀕死のベンを助けたのは、無線を聞いて駆け付けた出産間近の女性警官マーラだった…。」

Amazon商品ページより引用)

【予告編】

ストーリー……C
ゾンビの質……C
キャラクター…C
設定……………D

総合評価………C−

【良い点】
・ゾンビの出来はなかなか良い
・良くも悪くもストーリーは普通なのでまあ見れる

【悪い点】
・キャラ設定の特殊さに脚本が追いついていない

・無理矢理な展開が多く粗が目立つ

とにかく「いや無理があるやろ」と所々で言いたくなるような映画です。キャラ設定がかなり特殊で、大きなハンデを抱える主人公たちがこの絶望的な状況をどう生き抜いていくのか、と最初は期待感を持って見ていられるのですが、キャラ設定の特殊さに脚本がついていけておらず、映画としては残念な結果に。

【以下、ネタバレ注意!】

盲目(見えないとは言ってない)
これ完全に見えてるよね。

 さて今作ですが、無理ゲーな設定を全面的に押し出した少し変わり種のゾンビ映画です。このご時世、似たような内容のゾンビ映画なんて山ほどありますからね、こういうところでオリジナリティを出そうとする努力は大変素晴らしいと思います。あわよくば、その努力の方法性を内容にまで向けていただければ……

 さて、では愚痴もほどほどに、今作の詳細な評価を見ていきましょう。まずは良い点からです。

 今作の良い点は、ゾンビの出来自体は割と良いという事です。ここでいう出来というのは、主にメイクなどの外観関連ですね。ゾンビ映画において、ゾンビの出来は高すぎて困るという事はないので、これが標準以上のクオリティを保ってくれているのはありがたいです。また、今作のゾンビはいわゆる走らない系なのですが、そのタイプのゾンビ特有のジリジリと迫り来るような動きについても及第点クラスのクオリティはありました。これも映画全体の緊張感、緊迫感の有無に直結してくる部分なので、ここが出来ているのは嬉しい点ですね。

 しかし、このゾンビのクオリティの部分については、ある程度のクオリティが保たれているのと同時に、ある重大な欠陥が存在します。それについてはまた後ほど。

 では、続いて悪い点を見ていきましょう。今作の悪い点は、何と言っても「盲目&妊婦」という設定ありきで映画を作った結果、脚本がそれに全く追いついて来ていない点です。このせいで、今作は所々にとにかくアラが目立つ。

 今作は見ての通り、盲目の主人公と妊婦のヒロインのコンビが、ゾンビだらけになった舞台からの脱出を図る、というお話なのですが、「とにかく特殊な設定のゾンビ映画を撮りたい」という想いが先行しすぎて、内容がそれに全く追いついてません。

 普通この映画のDVDを手に取った時、大概の人は「盲目と妊婦という大きなハンデを抱えながら、一体どうやってゾンビの大群から逃れるんだ?」という疑問を抱くはずです。なんせ盲目ですからね。目が見えない状態でゾンビだらけの場所に放り込まれたとしたら、移動一つとっても文字通り命懸けですよ。武器もまともに使えない以上、当然戦闘要員としては全く
期待できません。そして、彼と並ぶパートナーも妊婦、つまり普通の人より、圧倒的に体力的なハンデを抱えています。そんな2人が組んだところで、まあ普通に考えれば死亡必至ですよ。生き残れるわけがない。どう考えても不可能です。

 でも、この映画はその不可能を覆してくる。いや、覆せないとしても、最後の最後までこの不可能な命題に抗ってくれるはずです。でも、一体どうやって……?

 普通ですよ、こんな期待感を持ってこの映画を見始めると思うんですよ、普通。つまり、「超ハードなハンデを抱えながら、どうやって生き抜くのか」、この「どうやって」の部分を見たくてこの映画を見でしょうよ。少なくとも私はそうでした。しかし、それに対してこの映画が叩きつけてきた解答は、非常に残念極まるものでした。一体どういうことなのか、それを説明する前にまず、触れておかなければならない点があります。

 この映画の主人公、盲目と書いてありますが、正確には盲目ではないです。少なくとも全盲ではなく、実にうっすらとですが、見えてます。例えるなら、超絶視力悪いド近眼の人程度の視力はあり、視界が常に激しく霞んでいる、みたいな感じ。ただまあ、目の前に迫るゾンビの顔すらぼやけて全然見えてないので、視力が使いものにならないという意味では盲目に近いのですが……これ、後半からは事情が変わってきます。それについては後ほど詳しく説明しますが、とりあえず今は、「常に視界が激しくぼやけてて視力には頼れない人」と思って読み進めてください。

 さて、そんな主人公くんが、ゾンビ蔓延るこの世界で生き残る話と言うからには、見る側は当然、普通のゾンビ映画には見られないこの映画特有の工夫を期待します。そりゃ、ほぼ何も見えてない人が主人公なのだから、当然話の展開だって普通のゾンビ映画とは大きく違ってくるはずです。なんせ移動は命がけ、接敵しようものなら対抗手段どころか、逃げることもままなりません。ただおとなしく籠城しているだけでは、助かる見込みもないでしょう。さて、一体どうすれば、彼らは生き残れると思いますか?
 そう、答えは実に簡単ですね。主人公たちが大きなハンデを抱えているのなら、それに合わせてゾンビを弱くしてやれば良いのです! もっと言うと、主人公たちが割と余裕がある時はゾンビにも元気に振る舞ってもらって、彼らが余裕がなくなってきたら、ゾンビたちも急に動きを鈍くする。そうして、場面場面に露骨なバランス調整を施すことで、主人公たちがギリギリ何とかできる状況を演出してあげるんですね! これなら、別に盲目というハンデを乗り越える努力をさせずとも、常にギリギリハラハラドキドキの展開を演出できるってもんだぁ!

すごい、天才かな?

 はい、残念ですが、今作の展開は割とマジでこんな感じです。主人公が目が不自由だから、常人なら何とかできそうな状況でも到底太刀打ちできない。ならば逆に知恵を絞って絶望的な状況を乗り切ろうとか、罠などを効果的に使いそもそもゾンビと接敵しない状況を作り出すとか、逆に視力に頼らない分、暗闇でも動きが鈍らないことなどを工夫し、(ゾンビの視力は夜は悪いという前提で)常人は避けるであろう夜の移動を積極的に取り入れるとか、そういう「盲目というハンデを克服する工夫」や「逆に盲目の利点を生かす工夫」的な、当然入っているべきシーンが、今作からは綺麗さっぱり抜け落ちています

 まさに「盲目という設定を用意したはいいけど、脚本上うまく扱い切れないので、展開はよくあるテンプレをそのままコピペ、でもそれだとどうしても盲目という設定と噛み合わない、無理がある部分が出てくるので、逆にゾンビを弱く調整することで乗り越えたことにする」という具合です。ゾンビは常に主人公たちを捕まえられるか捕まえられないかくらいの水準を保って動くよう設計されているため、彼らが早く動ける状況では早く、そうでないなら遅くなるように設計されています。しかもこの傾向は後半に行くほど強くなり、ラストシーンなんかは妊婦を支えながら歩く主人公とその後ろにゆっくり続くゾンビたちという、一緒に仲良くお散歩しているようにしか見えない光景も見られました。微笑ましいですね。

 しかもこの盲目の主人公、前半こそ視力は使い物にならないのですが、持ってた医療用の目薬のおかげか、はたまた大人の事情でか、中盤以降は明らかに視力が回復してきます。最初は目の前もぼやけて見えなかった彼が、それこそ中盤は5メートルほど先のゾンビに一撃でヘッドショットを決められるくらいには見えてます。こうなるともう盲目という設定すらなくなり、ゾンビは弱いわ目は見えてるわで……。

こんなことを平然とかましてくるもんですから、当然映画全体に見過ごせないアラがたくさん出てきます。特に気になる部分で言うと、ゾンビの性能がシーン毎にブレブレで安定しないので緊迫感がない、主人公見えてるのか見えてないのかハッキリしないため展開に緊迫感や期待感が持てない、と言うところが挙げられるでしょうか。この辺は完全に、「盲目という設定を用意し、それに合わせて展開を考える」のではなく、「とりあえず盲目って設定を使いたいけど、それ用の展開が思いつかないので、既存の枠(テンプレ)に無理矢理押し込める」ということをしている弊害でしょうね。

ちなみに妊婦設定の方ですが、これまたあってないような使い方しかできていなかったので、スルーします。

というわけで総評ですが、話のベースがテンプレゾンビ映画なので、全然最後まで見れないことはないんですけど、視聴当初の期待には全く答えてくれない映画でした。こっちは盲目と妊婦が互いの弱点をカバーし合って絶望的な状況に立ち向かう、的な話が見たかったんですけど、そもそも今作では2人一緒にいる時間より各々が単独行動している時間の方が多いので、それも見られず……と、面白そうな設定を何一つ活かせていない感が強くてなかなか残念でした。

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