ご無沙汰しております。
この度、アマプラでめっちゃ久しぶりにB級映画を視聴いたしましたので、これまためっちゃ久しぶりにここにレビューなどをしたためた次第でございます。簡素なレビューとなっておりますが、よろしければ最後までご拝読よろしくお願いさしすせそ
さて、まともなレビューは久々すぎてちょっと書き方を忘れてしまってますが、早速ゆるゆるとやっていきましょう!
今作ですが、アマゾンプライムで字幕版を見ました。まずはあらすじと予告編をどうぞ。
【基本情報】
国籍 イタリア
制作 2018年
【あらすじ】
「移民反対の抗議集会が活発化するローマ。イタリア人の若者エンリコもまた、不法入国者を人間以下に見る差別主義者だった。しかし、突如発生した暴動で街が混乱に陥る中、一度は死んだ者たちが次々とゾンビ化していく異様な光景を目の当たりにしたエンリコは、助けを求めて移民が住む収容所の閉ざされた扉を叩き続けた。襲い掛かるゾンビの群れから間一髪のところを救い出されたエンリコは、残り少ない食料を分け与え寝る場を提供してくれる移民たちの優しさに触れ、差別の意識が薄れていくのを感じていた。そんな矢先、遂にゾンビが屋内に侵入し最悪な事態に見舞われてしまう…。 」
(Amazon商品ページより抜粋)
【予告編】
ストーリー………C
キャラクター……C
ゾンビの出来……C
設定………………D
総合評価…………C
【良い点】
・展開が大きく動くラスト付近は面白い
【悪い点】
・展開が王道的過ぎる
・設定がかなり甘い
良くも悪くも、古典ロメロ映画リスペクト! って感じの映画です。ノロノロゾンビに囲まれての立て篭もり、救いようのないストーリーなど、設定や話の流れがいかにも古典ゾンビを思い出させる今作。やや強引ですが一言でまとめてしまうと、「1970年代なら今作も評価されてたんでしょうけど、今はもう2020年なんで……」という感じ。古典のロメロ作品とかが死ぬほど好きで、ゾンビは走るのも叫ぶのも、早歩きすら認めん! という方ならめっちゃ楽しめる……かもしれません。
【以下、ネタバレ注意!】
さて今作ですが、移民の抗議活動に勤しむ青年の前に突如ゾンビが大発生、仲間が次々と襲われる中、自分は憎き移民者たちのコミュニティに保護され、そこで立て篭もる間に移民の人たちと触れ合ったりしてなんかいい感じに心を通わせていくハートフルなお話になっております。そういうのいいからもっとゾンビを……
では早速、悪い点から見ていきましょう。今作の悪い点は、展開がとにかく王道的過ぎるという事と、設定がとにかく甘いという事です。
あらすじを見ての通り、今作の大まかな流れは、「集会場にゾンビ発生→施設に立て篭もり→人間同士の内輪揉め→ゾンビ襲撃→全滅」という、まるで絵に書いたかのような王道展開、あえて悪く言うと、全然捻りのないテンプレ展開をなぞります。もう本当にここに書いたこと以外のことが起こらなさすぎて、ストーリーについてはマジで何も言うことがないくらいのテンプレ展開です。
別にテンプレ、王道自体を否定するつもりは毛頭ないのですが、今作の展開に限ってはいかんせんテンプレがすぎて、意外性や緊迫感、ハラハラというものがものの見事に宇宙の彼方に吹き飛んでしまっているのは、流石に言及せざるを得ませんでした。もうね、あんまりにも展開に捻りやオリジナリティが無さすぎて、本当に古典のロメロ映画見てるみたいな気分になります。
いや、私も古いゾンビ映画は好きですよ、ナイト・オブ・ザ・リビングデッドとか、ゾンビとか、普通に結構好物です。でもですよ、それら王道ゾンビ映画の展開をそのままコピペしたような作品を作るのであれば、極論言ってしまえば「別に今作を見なくてもコピペ元の名作だけ見てればいいじゃん」と言うことになるわけです。しかも今作、展開こそテンプレですが、ゾンビのまともな襲撃は終盤までお預けで、基本的に退屈なシーンが多い、というのも大きなマイナスポイント。展開はどこかで見たようなもの止まりのくせに、中身は退屈、このままでは映画としてあまりに残念です。そこで、展開は王道をなぞりつつも、そこに何か一つでも今作にしかない色、いわばオリジナリティな部分を付け加えて作品を仕上げる事が求められるわけですが……。
おそらく今作において、その
オリジナリティにあたる部分は移民問題というテーマを取り扱っている事だと思うんですが、ぶっちゃけこれを上手に扱い切れているかと言うとひたすらに微妙。私が移民問題に微塵も興味がない&移民問題に揺れる欧州諸国の社会情勢を理解していないことを差し引いても、あまりにもこのテーマの扱い方は雑だな、と感じました。
この原因は幾つかあるのですが、大きな問題として、移民を嫌う主人公サイド、そして移民者コミュニティに属する移民者サイド、この両サイドのキャラクターの掘り下げ方が実に中途半端で終わってしまっていることが挙げられます。いかにゾンビが発生した非常事態とはいえ、主人公は死ぬほど嫌っているはずの移民者たちとかなりあっさり打ち解けますし、移民者たちは主人公が反移民運動をしていた事を知らないので、そこに何の対立も起きません。対立が起きないという事はそれ以上の掘り下げが起こらないという事であって、折角の反移民思想主人公が移民者たちと心を通わせて云々、的な空気にならないんですよ。
一応、移民者の少年と心を通わせて打ち解ける的なシーンもあるんですが、そもそも主人公が移民コミュニティに入って以降、主人公と移民者たちの間にこれといった衝突が生まれないため、衝突→和解→心を通わせる、的な心を揺さぶられるプロセスが一切なく、ガチで「知らない子供と遊んでたら仲良くなった」くらいの軽さしか無いんですよ。このせいで、折角用意した移民というテーマがまるで息をしてません。これは本当に勿体無い。この辺りは、設定の甘さがかなり出ていたと思います。
さて、そんなこんなで、王道すぎてどこかで見たことがあるような流れ、あんまり出てこないゾンビ、退屈な展開と、なかなかに長い顔を隠せない時間が過ぎますが、映画のラストスパートに向けた終盤20分、この映画の印象が大きく変わります。
それまでお預けされていた出番を取り返すかのように、ゾンビたちが施設内に一斉に侵入、狭い廊下のあちこちで徘徊し始め、逃げ場を無くしたキャラクターたちが1人ずつ着実に襲われ、死んでゆきます。この辺、ノロノロでもっさりなゾンビの挙動や演技っぽさ極まる戦闘描写などのせいで、特に派手さは皆無なのですが、これがなかなかどうして、古典っぽい展開と噛み合って結構いい味を出してくれます。侵入してきたゾンビたちにキャラクターたちがなすすべなくやられていくだけというのも、これまた古典ゾンビな雰囲気と噛み合って悪くなかったと思います。
そして最終盤、今作最大の見せ場へ。なんだかんだ、最後に残ったのは主人公と、彼がサッカーをして心を通わせた少年2人のみ。目の前には開かないドア、振り返れば後ろにはゾンビの大群が。もうここで終わりか、というところで、主人公は何と、少年を逃すために自分が犠牲となりゾンビの群れへ突撃。その隙に少年は逃げ出し、最後の生存者となった……
……っていう展開が、なんか最近のゾンビ映画にありがちじゃ無いですか。しかしこの映画、この最後の最後に至るまで、古典ゾンビリスペクト魂を発揮。なんと主人公、何の躊躇いもなく突然少年をゾンビの群れに突き飛ばし、彼が食われている間に自分1人だけ脱出に成功……かと思いきや、それを見ていた仲間に後ろからハンマーで殴られ死亡。彼もゾンビに囲まれたまま、最後には誰も残らなかった……という「ゾンビ映画なんて何の救いもないバッドエンドがお似合いなんだよ上等だルルォ!?」という、監督のこだわりが見えました。
このシーン、個人的にはすごい衝撃的だったんですよ。というのも、テンプレ展開満載な今作の事だから、「まあ最後は何の捻りもなく子供だけ助かるんやろうな」と思って見ていたからです。いわばここにきて初めて、予想を大きく裏切られたのです。それも、主人公は顔色ひとつ変えず、本当にあっさりと少年を見捨てる決断をしたのですから、もうダブル☆オドロキでした。この時私は、「そういえば古いゾンビ映画って、こういう救いのないバッドエンド上等だったな」というどこか懐かしい気持ちと、これだけ今作を古典だテンプレだと思って見ていながら、この展開を予想できなかった自分の脳が、ハッピーエンド、ないし救いのあるバッドエンドが蔓延る昨今のゾンビ映画界隈に染まりきっていた事を恥じたのでした。
というわけで、今作の総評ですが、一言で言うと「お前何年代の映画だよ」です。ノロノロの中でも、迫力を捨てたただただ不気味な動きのゾンビ、まるで古典ゾンビ映画かのようなテンプレ展開など、どことなく古い映画を思い出させる構成は、一通りゾンビ映画のツボを押さえているともいえますし、名作の劣化コピーと捉えることもできます。独自色であるはずの移民問題の取り扱いは雑で甘さが目立ちますが、ラスト付近の展開はなかなか良く、ゾンビ自体の質も悪くはないので苦痛に思うほどではない、というのは評価できるでしょう。総じて、光る物はあるものの、絶賛するポイントはこれと言ってない、と感じた映画でした。