「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

クリープ のレビューです(総合評価C+)

(画像:Amazon商品ページより引用)
 キチガイストーカーの演技が異様に上手い。さては本職だな?
 さて今作ですが、ネットフリックスで字幕で視聴しました。というかこれもうネトフリくらいでしか見れないんじゃないでしょうか? 予告編どころか日本版のAmazonページすら見つからなかったんで、あらすじはネトフリのものです。
【予告編】
見つかりませんでした……

【あらすじ】
ある映像作家のもとに景気の良い依頼が舞い込む。上機嫌で山奥に依頼主を訪ねると、時間の経過とともに彼の奇妙な言動が気になり始め…。(あらすじ:Netflixより引用)
ストーリー……C
キャラクター…C
設定……………C 
総合……………C+
オススメ度……C
【良い点】
・POVの良さをちゃんと活かしている
・キチガイのおっさんがちゃんとキモい
 
 
【悪い点】
・盛り上がりが薄い
・ラストシーンがクソ残念
 POV映画の中では、割ときちんとその良さを出せていた印象の映画です。淡々と話が進んでいくので盛り上がりは薄いですが、語る部分はちゃんとある。ただし、ラストシーンは微妙。
【以下、ネタバレ注意!】
 今作ですが、金につられておっさんのホームビデオ撮る仕事を引き受けたおっさんがキチガイの依頼主に粘着されてしまい、結果おっさんがおっさんにストーカーされるという、まさに地獄絵図なPOV映画です。その事実が1番のホラー要素。
 では、早速今作の詳細な内容について見て行きましょう。まずは良い点から。
 今作の良い点は、キチガイ役のおっさんがしっかり気持ち悪いということと、POVの利点を割としっかり出せていることです。
 ガン宣告を受け余命少ないおっさんが、自分の子供のためにホームビデオを残したいんだ、という高額依頼に飛びついた主人公。舞台となる山小屋を彼が訪れるところから、物語はスタートします。そこで行われる、撮影と称した気持ちの悪いデートムービーの撮影には背筋に悪寒が走ります。まずいきなり裸のおっさんのお風呂映像の撮影から始まり、近くの森林を探索して、岩がハート形にくりぬかれた小さな水溜りを見つけて大喜び、その後2人で、恥を感じて人には言いにくい話の暴露大会をし、夜はケモナーの妻と動物コスしてぶち込んだ時の話を聞かされるなど……。
 もうね、マジでキモい。もちろん主人公にその気はなく、依頼主のおっさんが一方的に主人公のことをからかって、主人公がそれをドン引きして見ている、という構図なのですが、この独りよがりな一方通行のラブコールが実に痛々しく気持ち悪い。しかも、何というかキモさの演出が絶妙で、相手が嫌がるの分かってて驚かしたりして引かれたりだとか、少し会話の方向性がずれてて微妙に話が噛み合わない感じとか、「こんな人マジでいそう」という種類のキモさなんですね。このおっさんの異常性が実によく出ていて、さすが登場人物2人だけで映画一本分の時間を持たせるだけのことはあるなと、ある意味感銘を受けました。この、どこまでが本気で、どこまでが計算でやってる部分なのかまるで分からない不気味さがいい味出してますね。いやーキモいっす(誉め言葉)
 また、ハンドカメラを使ったPOVであるという利点を結構よく出せていた印象も受けます。キモさの演出という点で言えば、風呂で溺れたふりしたり、森の中で突然出てきて大声で驚かしたりなど、何度も何度もしょーもないビックリ要素を一人称視点で見せつけられることによって、おっさんへの苛立ちが募って殺意が湧くと同時に、明確に嫌がってる相手に何度も同じ嫌がらせを仕掛けては喜んでるおっさんが、一般人とは完全にずれてる感覚を持ったキチガイであるという認識を持たせられることや、こんなキチガイのホームビデオを撮らせられる主人公の気持ちにもなることが出来る、という効果がありました。
 ホラー的な面で言っても、何度もおっさんの悪ふざけで驚かされることによって、また画面外から何か出てくるのではないか、と警戒させられることや、一人称視点で恐る恐る進んでいく臨場感、そして時に、定点映像に切り替わったりカメラを持つ人物が入れ替わったりして、違った視点からの映像を楽しめるのも工夫として面白いです。総じて、カメラワーク周りのクオリティは上々だったと言えるのではないでしょうか。カメラ置いて回したまま寝てる主人公の髪をおっさんがこっそり切って持ち帰るとことか最高にキモい。
 という感じで、「ストーカーおっさんのキモさ」が如実に表れているこの作品ですが、盛り上がりが薄いということと、ラストシーンの雑さについては悪い点でした。
 先に述べましたが、この作品に登場人物は基本2人しかいません。ストーカーされるおっさんと、ストーカーするおっさんです。この2人(+電話の相手)しか登場しないのに、映画一本分の間をしっかりと確保できているところは賞賛に値すると思いますが、やはり基本的には起こった事実を淡々と記録していくような作りになっているので、先の展開が気になってワクワクドキドキしたり、食い入るように見させられるような場面はほぼなく、終始起伏に乏しいのは気になる部分でした。悪く言えば、盛り上がりに欠けると言いましょうか。
 また、この盛り上がりのなさをラスト付近の展開でカバーして、最後にどかっと綺麗に映画を締めてくれる何かがあればよかったんですが、この映画のラストシーンは、湖の畔に呼び出された主人公がベンチに座ってストーカー相手を待っていたら、後ろからこっそり迫ってきたストーカーに斧で頭カチ割られる映像が遠くに置いたビデオカメラに映っていた、という、なんともあっけない終わり方
 なんか、わざと主人公の嫌がることをして気を引き、自分と主人公のツーショットが入ったハートのペンダント送りつけ、夜中にこっそり主人公の家に侵入してちょっかいかけたりなど、あんだけキモい言動を繰り返してストーカー行為をしてきた上、主人公に対しても「自分のことをウザいと思った瞬間、君の瞳に一瞬宿る僕に向けられた殺意がたまらん」とかなんとかクソキモい意味分からんことを言ってたくせに、結局最後は普通に不意打ちで殺すだけかよ、というがっかり感。また、主人公も主人公で、いくらなんでもストーカーの呼び出しに応じて会いに行くのに、後ろ無警戒で湖眺めて座ってるだけなのは不用心すぎるだろ、と主人公のアホさに対する呆れも湧きます
 さらに、これらが全部「遠くに置かれたカメラで撮られた俯瞰視点映像」というところが大問題で、何が問題かってまるで臨場感が感じられないことなんですよ。臨場感を感じる一人称視点と、カメラを置いた定点視点を両方使うのは面白いと思うのですが、この最後のシーンは絶対臨場感重視で一人称視点にしたほうが良かった。はるか遠くに座ってる主人公の背後からおっさんが近寄ってきて、狼の被り物取り出して被り、斧振り上げて主人公殺す無音映像を見せられても、ぶっちゃけギャグにしか見えないんだよなぁ……。
 という感じで、それまで重ねてきたキモいストーカー行為に無関係な突然の不意打ち殺害で大きく萎えた上、それが俯瞰視点なせいで欠片も臨場感がない終わり方にさらに萎えるという、ラストシーンへの不満は計り知れない。本当に雑すぎるラストだった。
 総評ですが、内容的にはありがちで目新しさも特にないものの、POVを活かしたキモさ、異常さの演出にはなかなか目を見張るものがあった一方、ラストシーンで大減点、という感じの映画でした。本当にこのラスト、もうちょいなんとかならんかったんでしょうか。
 では、今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。
>

©Copyright2021 第B級映画レビュー小隊