「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

カルト のレビューです(総合評価B)

(画像:Amazon商品ページより引用)
 突然の有名どころレビューはB級映画ハンターの特権
 もちろんネトフリで鑑賞しました。まずはAmazon先生のあらすじ&予告編からどうぞ。
【予告編】
【あらすじ】
凶悪な怨霊VS.最強の霊能力者! そのバトルの結末は! ?人気タレントのあびる優、岩佐真悠子、入来茉里の三人は、ある母娘の除霊番組のレポーターを務めることになる。だがそこには想像を超える恐ろしい霊が巣食っていた。除霊に訪れた霊能者たちは次々と倒れるが、娘の美保に憑いた霊は取り除くことができない。遂に最強の霊能者NEOがこの除霊に臨む! 一体この家を恨む真の呪詛者は誰なのか?霊との戦いでNEOは勝利することができるのか?(あらすじ:Amazon商品ページより引用)
ストーリー……B
キャラクター…A
設定……………C 
総合評価………B
オススメ度……B
【良い点】
・話の盛り上げ方が実に上手い
・キャラの印象が強烈
・これだけ好き勝手やってるのにちゃんと最後までモキュメンタリーになっている
【悪い点】
・続編がまだ出てない
 言わずと知れたカルト的人気を誇る白石監督のカルト映画です。分かる人には「コワすぎ!」の監督、一般人には「貞子VS伽倻子」の監督と言っておけば伝わると思います。ホラーモキュメンタリーとしての出来栄えは流石の完成度で、普通のホラー→NEO登場→NEO無双の流れは素晴らしかったです。ホラーとしてもコメディとしても楽しめる、一粒で2度面白い良作。まだの方は是非!
【以下、ネタバレ注意!】
 前々から見たかったから見たけど期待を裏切らない面白さだった。
 さて今作ですが、あの「コワすぎ!」「貞子VS伽倻子」などで有名な白石監督のホラーモキュメンタリー映画です。私はこの白石監督作品については完全にニワカ(コワすぎ途中までしか見てない)なのでそれについて語ることは出来ませんが、ファンの友人から「この映画は面白い」と勧められたことをきっかけに興味を持ち、ついに見ました。とにかくキャラのインパクトが強烈だった(小並感)
 というわけで、早速映画本体の中身について詳細に見て行きましょう。今作ですが、「怪奇現象が起きているというお宅にテレビと霊能者がお邪魔し、この原因を除霊しよう!」という心霊企画を立ち上げて撮影にこぎつけたところ、そこでマジモンの手の付けられない強力な霊が出現し、霊能者たちが次々と敗北して倒れていく中、ホストみたいな格好したクッソ胡散臭い三浦涼介(NEO)が持ち前の天才的霊能力でこれを蹂躙するお話です。これだけ見ると完全にギャグ映画ですが、前半は普通にホラーしてるんだぞ。
 では、早速良い点から見て行きましょう。今作の良い点は、これだけ好き勝手やってもちゃんとモキュメンタリーになっているということと、話の盛り上げ方がとにかく上手いということ、そして、とにかく強烈に印象に残るキャラクターです。簡潔に言えば、ストーリー展開とキャラクター、その2点について今作の秀逸さが伺えます。
 まずはストーリー展開について。今作は、「心霊現象が起きている家に霊能者連れて除霊に行く」というテレビ企画が立ち上がり、そこに3人の女性タレントが起用される、というシーンで幕を開きます。まず起用されたのが雲水という霊能者で、これがもう「ザ・霊能者」という格好の胡散臭いおっさん。しかしその方、霊能者という肩書きの人にありがちなパチモンではなく、どうも本物の霊能者だった模様で、その家に起きる怪奇現象の原因特定や家族に降りかかる厄災の撃退に奔走します。しかし、そんな本物の霊能者である彼の必死のお祓いも虚しく、ついには家族の娘が何かに取り憑かれて飼っていた犬を食い殺すという恐ろしい事態に。もう自分の手には負えないと判断した彼は、自分の師匠である2人目の霊能者に連絡を取ります。
 その連絡を受けて現れた2人目の霊能者、龍玄。彼もまた「これぞ霊能者」という格好をした胡散臭いおっさんなのですが、彼は電話越しに娘の除霊に成功したり、怪異の一部撃退に成功する、弟子の雲水と力を合わせてお祓いを成功させるなど、自身の相当な実力を遺憾なく発揮。この怪異は幕を閉じたかに思えました。
 しかし後日、そんなマジのガチ霊能者である龍玄から連絡が入り、自分の除霊は失敗に終わったことを告げられます。弟子の雲水は死亡し、龍玄自身の身ももう長くはない、と。彼は、あの家に巣食う存在は人間には祓えないこと、自分たち人間の手には負えないことを呟き、最後に「自分はもう死ぬだろうが、除霊はちゃんと後任者に引き継ぐ」と言い残し、命を落としました。
 そして、この長い前振りの後登場するのが、今作の主役である救世主、黒いスーツに金髪で、ホストの格好した「霊能者」のイメージとは程遠い胡散臭さ全開の兄ちゃん、NEOだったのです。見る人誰もが「うさんくせぇ」という印象を抱く彼ですが、登場した瞬間からそのチート能力を全力解放。共演者に取り付いているという霊を瞬時に除霊し、怪異の家へ下見に行った時点で呪いの正体を即特定する、原因を断ち切るどころか物理的制裁も加える、「人間の手には負えない」と評された凶悪な存在と対等以上に渡り合うなどもうやりたい放題。彼の登場以降はそれまでの絶望的だった雰囲気がガラリと変わり、まさに一転攻勢のヒーローショーが幕を開けるのでした。
 長くなりましたが、これが今作のあらすじでした。ここで長々と今作の内容を詳細に語らせていただいたのは、このストーリー展開のさせ方というか、構成がもうとにかく非常に良く出来ているということをお伝えしたかったからです。

今作のターニングポイントである救世主NEOの登場とそれ以降の無双っぷり。この先の展開は間違いなく今作一番の見所ですが、ではそれ以前、ネオ登場前の物語には意味がないのかと言われると全くそんなことはありません。むしろ、普通の尺度で考えれば十分優秀と言える雲水と龍玄という2人の霊能者をもってしても全く太刀打ちができない、今回の怪異はそれほど恐ろしく人間の手には負えないのだという印象を、贅沢にも実力のある霊能者を2人も使って強く印象付けられるからこそ、NEOの登場がこれほどまでに頼もしく、また大きく盛り上がって来ているのです。前半はとにかく絶望感を全面に漂わせておいてからの後半のこの盛り上がり方はもう、単なるコメディとして片付けることはできません。この「本命登場前に前振りをしっかりやる」という基本がしっかりと出来ている。これがまず大きな評価点。

 また、「すごい強い霊能者がすごい強い霊と戦う!」という単純なストーリーで終わらせることなく、この怪異の原因は単なる霊の仕業ではないとNEOが気付き、裏で渦巻く人間のドス黒い陰謀への挑戦という側面でも描かれている部分が素晴らしいです。ホスト風の無敵救世主VSすごい霊の対決、という現実離れした組み合わせになると、普通なら単なるギャグ描写で終わってしまいそうなところを、今作ではその裏にいるカルト教団の陰謀を解き明かして真相に近づいていくというサスペンス的な楽しみ方も用意されていて非常に奥が深い
 このようなストーリーも用意されているからこそ、今作は後半これだけハチャメチャに好き勝手なことをやっていつつも、終始きちんと現実調のモキュメンタリーという体裁を見事に崩していません。こんだけ現実離れした強烈なチートキャラを使いつつも、お話自体は現実調なモキュメンタリーに終始させる、このバランス調整の仕方はお見事としか言いようがない。
 また、今作には3人の霊能者が登場しますが、最初の2人をあえてコテコテなイメージの霊能者として描くことで、NEOの存在がより際立っているのもGood.そしてさらに良いのは、その最初の2人の霊媒師も決して使い捨てのコマではなく、それぞれ優秀な霊媒師としてきちんと描写してくれていることです。NEO登場のインパクトを増強させる役割を持ちつつも、個々のキャラとして見たときにもしっかりと魅力ある描かれ方をされている。これって……勲章ですよ?
 というわけで総評ですが、今作は単なるホラー映画としても、NEO登場以降の展開を楽しむコメディとしても、真相の裏側に迫っていくサスペンス調な映画としても、それらあらゆる要素を加味した上で面白いと結論付けられます。ホラーモキュメンタリー映画としてはかなりの傑作であると思うので、まだ見たことのない人は是非どうでしょうか!
 なお、今回は悪い部分について触れていませんが、これだけキャラもストーリーも強烈なので、もちろん合う合わないが激しく分かれるであろうという部分は考えられます。でもまあ極端なこと言うと、合う合わないがあることなんて全部の映画がそうだから誤差だよ誤差! そんな些細なことを気にするより、まずは見てみませんか、カルト! あと続編は……?
>

©Copyright2021 第B級映画レビュー小隊