「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

サンズ・オブ・ザ・デッド のレビューです(総合評価C)

 レンタル版を字幕で視聴しました。まずはAmazon先生のあらすじ&予告編からどうぞ。
【予告編】
【あらすじ】
“ゾンビが蔓延した終末世界――。ゾンビの脅威にさらされた町から脱出するため、モリーは恋人のニックとエアフィールドへ向かっていた。
しかし道中、ニックが無残にもゾンビに食い尽くされ、モリーはたった一人、貪欲なゾンビと共に砂漠に取り残されてしまう。
ゾンビの動きは鈍く、容易く逃れることに成功したモリーだったが、そのゾンビは眠ることもなく、ただひたすらモリーの後をつけ回す。
砂漠での過酷な状況下、モリーの体力は消耗し切り、わずかな食糧も底をつき始め…。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)
ストーリー………C
ゾンビの質………C
キャラクター……C
設定………………D 
総合評価…………C
オススメ度………C
【良い点】
・コンセプトはなかなか面白い
【悪い点】
・ゾンビが懐く
・どうしてこうなった(ラストシーン)
 アホなヒロインがゾンビ連れて砂漠横断している間に、何回かゾンビに胸キュンするポイントがあったため、気がついたらゾンビに対して情が芽生え、仲良く一緒にランデブーする、という映画です。アホみたいなコンセプト自体は嫌いではなかったのですが、ラストシーンがどうしてこうなった。
【以下、ネタバレ注意!】
 ゾンビは最後までデレないで欲しかった(原理主義者並感)
 さて今作ですが、ゾンビの大量発生が起きた後の世界で、ヒロインが砂漠の真ん中から飛行場目指し、ゾンビ引き連れて長々としたロングウォークをキメる、という作品です。爽快感もホラー感もなければハラハラする展開も皆無という、なかなか扱いが難しい代物でしたが、なぜか不思議な魅力があって私は結構好きでした、中盤までは。
 では早速、詳細な内容を見て行きましょう! まずは良い点からです。
 今作の良い点は、コンセプト自体はなかなか面白いということです。
 先に述べた通り、今作はゾンビを1匹引き連れて、アホのヒロインが砂漠横断する、というだけの内容です。そしてその道中、1人の寂しさに耐えきれなくなったヒロインは、コカインをキメたりする以外の現実逃避方として、反応がないと分かっていながら何度もゾンビ相手に独り言を話します。まあ、ゾンビに追われながらの砂漠横断なんて、肉体的にも精神的にもすぐ限界が来そうですから、独り言言って気を紛らわせようという気になるのも分かります。
 またヒロインは、砂漠横断の途中に何度かゾンビ以外の脅威にも見舞われます。砂嵐にあったり、犯罪者に出会ってレイプされたり、などですね。そしてこの犯罪者にレイプされたのを助けてくれたのが、ずっとヒロインにつきまとっていたゾンビくんだったのです。まあ、ゾンビ的には助けたんじゃなくて、手頃なところに餌があったんで食べただけなんですが。しかし、ヒロインが砂漠横断中最も渇望していたはずの『生存者』との出会いが、彼女にとっては最悪な形となって実現し、逆に自分を危機から救ってくれたのが、ずっと疎ましいと思っていたゾンビだった。こんなことがあったら、ゾンビに惚れてしまうのも無理はないな!
せやろか……。
 まあ、結局ヒロインはこのイベントを機にゾンビのことを見直し、一緒に砂漠横断してきたことへの仲間意識を勝手に持ち始めます。そして、ゾンビを岩にくくりつけた際、こいつをこのままここに置き去りにするか、それともまた一緒に旅をするかで悩んだ末、彼女はゾンビの拘束を解いてやり、一緒に旅をする決意をするのでした。
 まあ、これだけ見たら「馬鹿じゃねーの(嘲笑)」と思えますが、1人で寂しく砂漠横断してきたヒロインが精神的にも限界を迎えておかしくなり、また唯一出会った生存者にも犯されて半ば自暴自棄な状態になったところをゾンビに助けられ、これまでとのギャップから彼が仲間のように思えて情が湧く、という過程の描写はまあまあ丁寧にされていたため、多少無理があるとは思いましたが、彼女の気持ちが傾くのは理解はできました。これはこれで、一風変わったゾンビ映画のコンセプトとしては悪くないと思いました。
 というわけで、良い点は以上でした。続いては悪い点を。今作の悪い点は、結局ゾンビが懐いてしまうことと、ラストがなんかすごいことになってたことです。
 先ほどの続きですが、ゾンビに対して勝手に情が移ったヒロインは、結局ゾンビの拘束を解き、ゾンビを連れて行く決断をします。その後、いつも通り襲われるんだろうなあ、と思って見ていたら、なんとゾンビくん、何故か完全にヒロインに懐いてしまい、彼女の言うことをおとなしく聞いて、襲いも噛みつきもせずに、一緒にトコトコついてくるようになったのです。こうなってしまうと今作の魅力は半減でした。
 ゾンビはあくまでもゾンビのままで、その行動を自分に都合の良いように勝手に解釈してしまい、ついにはゾンビは仲間だと思い込んでしまった、精神的に限界を迎えた哀れなヒロインの行動心理というか、それを楽しんで見ていたのに、結局ゾンビが懐いちまったらこれまでの過程がぶち壊しじゃないか! まあ、これはこれで笑えたけど……。
 そしてもう1つ、というよりこっちが大問題。それは、ラストシーンの意味不明さです。またまた先ほどの続きですが、結局ゾンビくんとランデブーを続ける主人公は、軍隊に出会ってゾンビを殺されそうになったところを身を挺して守ってあげたり、そんなゾンビから甘噛みされて感染しかけた指を切り落としたり、などというハートフルなイベントをこなした先、またしてもゾンビを置いて行くか、連れて行くかという決断を迫られます。まあそもそも、彼女は友人の友人が待つ飛行場目指して旅をしていたので、そんなところにゾンビ連れてっても結局一緒に逃げることなんてできませんから、いつかはお別れしないといけない2人だったんです。そこで彼女は、「このままあなたを置いてはいけない……!」と考えて自分自身の手でゾンビを始末し、飛行場へとたどり着きます。
 まあここで、ヒロインはゾンビとの思い出を胸に秘め、仲間と一緒に飛行機で逃避行して終わりか、と思ったのですが、この映画は何故かここからもうひと盛り上がりがどうしても欲しいと思ったのか、途中でヒロインがちょろっとだけ触れていた、姉夫婦に引き取ってもらった自分の息子の存在を急に思い出し、「あかんやっぱあいつのこと心配やわ!」突然正義の心と母性愛に目覚めて飛行機を見送り、電話確認したところ息子くんはどうやらピンチっぽかったので車で街中に駆けつけて息子を助け、それまで都合よくどこにもいなかったのに急に湧いてきたゾンビの大群の襲撃を乗り切るため武器を手にして戦う、というところで終わりました。
 いやもうね、それはないだろと思いましたよ。それまでゾンビに情が湧いちゃう〜、みたいな話だったのに、ラスト付近だけ突然普通のゾンビ映画みたいになられたら、「じゃあこれまでのゾンビとのランデブーなんだったんだよ」としか思えません。まあ、このゾンビとのランデブーがあったからこそ彼女は成長し、昔捨ててきた息子のことにも気を向ける余裕が出てきたんだとは思いますが、それにしては丁寧な伏線回収があったわけでもないし、突然ヒロインが昔に捨てた息子のこと気がかりになって飛行機見送っちゃうようになった心境の変化もよく分かんないですし、何より「言うほどヒロインが成長する要素あったか?」としか思えないため、それまでの流れをぶった切って突然ラストシーン調整のために入れてきた、違和感のある展開にしか思えませんでした。これが一番いけない。

いや、百歩譲ってですよ、「飛行機乗り際に息子に電話してみたらピンチなのが分かったからやっぱ搭乗キャンセルして助けに行こう!」 なら分かりますよ? なんだよ、思い付きで搭乗キャンセルして、そのあと息子の安否確認って。順序おかしいだルルォ!? どうせやるなら、最初に決めたコンセプトのままで走りきって欲しかった。

 総評ですが、爽快感もなければハラハラ感もなくスローテンポな序盤〜中盤にかけては、好みは分かれるでしょうが一風変わったゾンビ映画、という内容でした。私は、これはこれでヒロインの心情変化とか感じ取れて割と好きでしたよ! 終盤はキツい。
 Amazonレビューとかをちらっと見た限りでは、皆さんヒロインのアホさ加減やラストシーンの展開にかなり不満だったようで、評価は結構低かったのですが、その他のサイトなんかを巡回していると、かなり高評価に思われた方も結構おられましたので、割と評価が分かれる映画だと思います。というか、絶対分かれるよ、この映画は。自分は、前半は好き、後半は嫌い派です。
というわけで、あらすじとか読まれて気になられた方はいかがでしょうか。この映画が面白いかどうかは、ぜひ君の眼で確かめてみてくれ!
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