「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

【アニメレビュー】異世界はスマートフォンとともに 全話制覇報告

突然ですが、皆様は『異世界はスマートフォンとともに。』というアニメをご存知ですか? 私も最近まで知らなかったのですが、つい最近、こいつを1ー12話まで一気見するという暴挙を行ったため、この場を借りて報告させていただきます。
まず最初に言っておくと、私は普段アニメはほとんど見ないです。多分、まともに1クールを見たのはガルパン以来。そんな私がこのアニメを見ようと思ったのは、どこかで見かけたある言葉が原因でした。

「異世界スマホ11話が史上最高の苦行」
どうも調べてみると、この異世界スマホというアニメ、11話の内容があまりにも酷すぎて炎上するほどだったのです。実際、掲示板、ツイッター、ニコニコ本編でのコメントなど、ありとあらゆる場所でこのアニメが叩かれていることを知りました。そして、「クソ」「苦行」と呼ばれるものにはどうしても興味を持たずにはいられない私は、とりあえず11話だけ見てみたんです。

結論から言うとその時は、「確かにつまらんけど、そんなみんな言うほどか?」と思いました。内容的には、『女の子が出てきて主人公にパンツ見せて、ヒロインが「主人公の取り合いするのバカらしいから、みんなで仲良く主人公のお嫁さんになろうよ」と言って最後にキスしてキスする』とかいうゲロ吐くような甘ったるい内容だったんですけど、ほんとそれだけだったんで、最初は「まあ俺って普段からクソ映画いっぱい見てるし、苦行に慣れちゃったんだろうなw」とかいう自分に酔い切ったクソ気持ち悪い余裕を持って斜に構えていました。でもその認識は、後々改められることになります。

本当に反省しています。ごめんなさい。

その後、ツイッターでこのアニメの評判について検索していると、気になる呟きを見つけてしまいます。その内容を要約すると、「11話だけ見て騒いでる奴は迷惑。このアニメが面白くないことは1話から見てきた俺が一番知ってる」「1話から見ないと11話の酷さは分からない」というようなものでした。

これを見た時、私は思った。

いや〜、ほならね、自分で全話見てみろって話でしょ?

そういうわけで、前置きが長くなってしまいましたが、ここからは私がこの苦行アニメを全話見た感想と、なぜこのアニメはこんなにクソ呼ばわりされるのかをアニメ素人がガバガバな分析を加えつつ、少しでも多くの人にこのアニメを見せつけるという目的を持って記事を書かせていただきます。そのため、このアニメを全く知らない方、見ずにとりあえず叩いていた人など、そのような方にも分かるように書かせていただきます。初見者ドンと来い!

「こんなもん見て記事書いてる暇あったら映画レビュー書け」という方、正論はそこまでだ!

というわけで、まずはこのアニメの簡単な紹介のために、あらすじとCMを貼らせていただきます。おうこのくらいは我慢して見ろや。
 
【あらすじ】

神様の手違いで死んでしまった主人公は、異世界で第2の人生をスタートさせる。彼にあるのは神様から底上げしてもらった身体と、異世界でも使用可能にしてもらったスマートフォン。様々な人達と出会い、大切な仲間を得ていく中で、いつしか主人公はこの世界の秘密を知る。古代文明の遺産を受け継ぎ、お気楽な世界の王たちと力を合わせながら、個性豊かな女の子たちと共に彼はのほほんと世界を巡っていく−−−(C)冬原パトラ・ホビージャパン/ブリュンヒルド公国(あらすじ:Amazon商品ページより引用)
【CM】
 「あらすじだけでお腹いっぱい」という方、言いたいことは分かりますが、大丈夫です。本編はこの比じゃないぞ。
じゃあまずはいつも通り、各話の感想とこのアニメの良い点悪い点を挙げてみましょう。また今回はより分かりやすさを重視し、点数制にしてみました。
1話……40点(基準点)
2話……45点
3話……80点
4話……10点
5話……55点
6話……50点
7話……50点
8話……75点
9話……20点
10話……40点
11話……15点
12話……65点

【良い点】
EDが良い
ヒロインがみんな可愛い
 
【悪い点】
主人公が死ぬほど気持ち悪い
ヒロイン一同に全然魅力がない
展開が異様なまでに盛り上がらない
 だいたいこんなもんだと思います。なお、上につけた点数は1話を40点とした場合の比較点になるので、別に80点だからといって死ぬほど面白かったとかそういうわけではありません。あくまで、1話に比べたらこのくらいの点数だろう、というだけです。また、各話の簡単な評価についてはツイッターで呟いているので、より詳細に知りたいという物好きはそちらまでどうぞ。
さて、というわけで、早速ガバガバ分析を始めていきましょう。
 まず最初に言わせていただくと、私がこのアニメを全部見終わった時の感想としては「クソアニメと呼ばれるだけのことはある」でした。確かにそこそこ面白い話が2〜3話分ほどありましたが、残りは基本的にちっとも面白くありません。ですが、このアニメにも2点ほど褒めるべき部分があったので、まずはそちらから行きましょう。
 このアニメで良いと思ったのは、「EDが良い」ということと、「ヒロインが可愛い」ということです。
 まずはEDについて。このアニメのEDはなんと、その回によって、映像と歌う人が変わるんですよ。これが毎話毎話、私の傷ついた心とすり減った精神力を回復させてくれるので本当にお世話になりました。「純情エモーショナル」という曲なので、いいから聞いてみて、どうぞ。まあ、それは本編には関係のない点なので置いておくとして。
 では、次は本命、ヒロインの可愛さについてです。このアニメはもうご想像通りのハーレムアニメで、情報によると主人公の嫁は最後9人になるらしく、かつこの1期だけでも4人を嫁にし、その他にもヒロイン2人に好意を寄せられ、他主人公をアゲアゲするサブキャラ多数……というような状態になるのですが、幸いなことにこのアニメに登場するヒロインたちは軒並み可愛いです。特にリーンさんとリンゼが可愛い。どう可愛いかというと……まあ、顔とかスタイルとかです。
※可愛い子その1。引くぐらい冬夜さんが好き。
※可愛い子その2。ヒロイン連中の中では唯一冷静。
 
要は見た目が可愛いんだね。後、稀に言動が可愛いこともあります、稀に。

それと、ヒロインではないんですけど、コハクはマジで見た目言動ともに常に可愛い今作の良心です。「彼が出てこない回は辛い」というぐらい、私の中では大きな存在でした。

   ※ 噂のコハクさん。かわいい。
 というわけで、良い点は以上だ。ここからは悪い点を挙げつつ、このアニメがなぜこんなにクソ扱いされているのかを分析していきますよ。
 このアニメの主な悪い点としては、主に「①主人公が気持ち悪い」「②ヒロインに魅力がない」「③展開が全く盛り上がらない」という3つが挙げられると思うので、順番に見て行きましょう。
 まずは①主人公の気持ち悪さについて。しかし、ここでいう気持ち悪さとは、単純に主人公の言動が受け入れ難いというだけの意味にとどまりません。いや、もちろん主人公の言動も最高に気持ち悪いのですが、それ以上に主人公の得体の知れなさがとにかく不気味で気持ちが悪いんです!
以下では、それについて具体例を示します。
 さて、主人公の得体の知れなさが気持ち悪い場面といえば、とにかく1話の冒頭シーンを挙げるのが手っ取り早いと思います。本当は1話冒頭部分だけでも見てきていただきたいのですが、見たことのない人のためにそれがどういう場面なのか簡単に解説しましょう。
 このアニメは、神様の手違いで死んでしまった主人公、通称スマホ太郎が、ちゃぶ台挟んで神様に謝罪されるシーンからスタートします。神曰く「雷落とした先に人がいると思わなかった。君は死んでしまった。ごめん」とのことです。それに対してスマホ太郎、「まあ、起きたことは仕方ないよね」信じられないほど大人の対応。しかもその後、「こっちの手違いで起きたことだからもちろん生き返らせるが、神界のルールで同じ世界には生き返らせられないから、異世界で蘇ってくれ」という神からの無茶苦茶な要求に対し「あ、イイっすよ」とこれまた怖いぐらい大人の対応なスマ太郎。そしてその時、「お詫びに何か1つ望みを叶える」との神の言葉に、太郎はこう返すのです。「じゃあ異世界にスマホ持って行かせて」
 もうこの時点で、主人公が自分の死と転生に対してまるで興味がないことに戦慄しました。百歩譲って、自分が死んだとか異世界行けとか言われてることがあまりに急すぎて実感がなく、半分夢だと思っているからこんな怖いほど無興味な対応したんだ、と好意的に解釈することはできますが、あまりに突然のスマホ持っていきたい発言に対しては完全に意味が分かりません。もっと他にあるやろ。おう、タイトルありきで展開決めるのやめろや。
 しかし千歩譲って、このスマホ持っていきたい発言についても、自分が死んだことの実感があまりになさすぎて、半分ふざけた頭おかしい対応をしてしまったのだ、と解釈することはギリギリ出来ます。現に主人公はその発言の後、「まあ、充電とかできないし無理ですよね」とかいう寒いセルフツッコミ入れてますからね。
 さて、本当に怖いのはここから。実はこの後、このスマホ太郎くんは、自分が地球で生きていた頃の過去の出来事について、マジのガチでモノの一切言及しません。別に転生前の過去編やれとかそういう意味ではないですよ。
 普通に考えて、ごく普通に考えてください。もう至極正常な人間がですよ、いきなり現世で死んで異世界放り込まれたとしたら、どんだけ美少女に囲まれていたとしても、絶対に一度は悲観的に考えることがあると思うんですよ。具体的には、放り込まれた瞬間、こんな何の勝手も分からない世界で生きていけるのかだとか、自分はどこに行って何をすればいいんだとこの先の未来に対しての不安を感じること。もしくは、自分がいた頃の世界に帰りたい、まあそこまでいかなくとも、友達はどうしているかな、両親は元気にしているかな、あの世界に暮らすみんなのことが気がかりだな……というような、過去に対しての振り返り。まあ普通なら両方、少なくともどちらか一方は感じるはずなんです、普通の人間なら。
 しかしこの主人公は完全に頭のネジが外れているのか、そのどちらの感情も持つことは一切ありません。自分が文字も読めない世界で暮らすことに対する不安を感じることがないどころか、両親や友達のことを思い返すシーンすらマジのガチで皆無なんです。しかも、手元にスマホとかいう、自分が生きていた世界の情報が手に入る機器を持っていながらにして、ですよ。異世界に転生しつつ、SNSや掲示板、ニュースサイトなど、自分が住んでいた世界の情報を閲覧しまくっているにも関わらず、自分の過去に対して思いを馳せたりするシーンが一切ないというのはハッキリ言って異常です。とても同じ人間とは思えません。

別に主人公が非情だと非難しているんではなく、当然人間が持っているべき感情が欠落してしまっていることに対して不気味さを感じるだけです。

 いえ、すみません間違えました。そんな主人公も、私が覚えている限りたったの一度だけですが、自分が住んでいた世界に対して興味を示すシーンが描かれていました!  異世界転生して間もない頃、主人公は1人ベッドで寝転がってスマホを見ながら、こう呟いたんです。

「えー、あのバンド解散するんだ」

 私が、「あ、この主人公完全にイカれてるわ」と確信したのはこの時です。このシーンが入るまでは、主人公の異常さを、自分が転生した実感がなかったからとか、そんな理由でなんとか誤魔化すことができていました。しかし、このシーンを入れながらにして、それ以外に主人公が生前の世界について一切思い返すシーンがないことを考慮すれば、自然とこの式が成り立ってしまうのです。
「自分の過去のあらゆる人間関係<<<<バンドの解散」
これはやばいです。しかも、スマホ太郎はこのバンドの解散に対してもそこまでショックを受けてなかったので、より正確に言うとこうなのです。

「自分の過去のあらゆる人間関係<<<<<さして興味のないバンドの解散」
もうここまでくると怖いよ。過去に何があったんだよ。いや、過去に何があったとかいう次元ではありません。このスマホ太郎くんのことを「サイコパス」と呼ぶ人たちがいますが、その気持ちはすごく分かります。最近サイコパスって言葉が安売りされ過ぎている気はしていますが、この主人公に対して使うことだけには躊躇いを感じません。だって、まともな人間じゃないですよ。おそらく彼は生前の世界で、自分の周りのあらゆる人に対してなんの感情も持てなかったのではないか。そんなことを思わさせられてしまうんですよ、もうこえぇよ。これら主人公の反応について、作中では「達観している」と説明されますが、これは達観しているのではない。単に頭がおかしいだけだ。
 つまるところ、このアニメの主人公からは「まともな人間さ」が一切感じられないんです。最初は、冒頭の件は実感がわかなかったからだろうなぁ、と好意的に解釈していたんですが、その後の言動を踏まえると段々そうは思えなくなってきて、バンドの件で確信しました。そしてこのアニメを見続けると、後にも先にも生前の世界への興味がバンドの解散しかなかったことに戦慄し、結果「この主人公頭おかしい」と思うに至るのです。この主人公ヤベェよ。まあ、その他にも主人公のサイコパスポイントはあったんですけど、正直これの前には霞むのでいいです。
※主人公。「スマホ太郎」、「スリップ厨」、「サイコパス」、「スマホ使え」、「は?」など、様々な異名を持つ
 そしてさらに酷いことに、このアニメではこのサイコパスが「スマホ太郎くんは凄くお人好しでみんなに優しい素敵」と各方面から絶賛の嵐を受け続けるんです。いや確かに、スマホ太郎くんは異世界転生するなり裏路地で悪党に絡まれてる女の子助けたり、路上で悪党と戦ってる女の子助けたり、魔物に襲われてる女の子助けたり、スリに絡まれてる女の子助けたりとなかなかにお人好しなんですけど、だからこそ余計に気持ち悪いんだよ。ここまでの言動を踏まえると、「なんか襲われてるけど、まあ俺には関係ないし」みたいなキャラの方がまだしっくりくるよ。
 こんななんの人間味もない主人公がですよ、神からもらった「身体能力やべー上に魔法も全属性使える」とかいうチート能力使って、なんの苦労も苦悩も努力もなしに、クソチョロいヒロインどもをはべらかしてヘラヘラしている様を見せつけられるんですよ。しかも、主人公が涼しい顔してチート能力使って格下をボコボコにするたびに、周りがキャーキャー騒いで絶賛する様をほぼ毎回見せつけられるので、これら全部ひっくるめて、主人公が気持ち悪いんです。
 そしてここから、「②ヒロインたちの魅力のなさ」に話が繋がってきます。「いやいや、さっきヒロインたち可愛いって言ったやん」と思われるかもしれませんが、可愛いと魅力があるかどうかはまた話が別だと思うんですよ。例えば知らないキャラでも、一目見て「おー、可愛いやん」と思うことはあると思いますが、そのキャラがどんな性格なのかとか、どんな考えを持っているのかとか、そういう人間性の部分が「魅力」に関わってくると私は思うんです。まあ、魅力の使い方がこれであっているかどうかは別として、可愛いかどうかとは別物の何かがあることは分かってもらえると思います。それを魅力と定義するなら、このアニメのヒロインたちは軒並み魅力がありません
 なぜなら、これはこのアニメ全体に言えることなんですけど、とにかく「問題発生→解決」までに要する過程、プロセスの描写が物凄く雑なんです。恋愛に限って言うなら、ヒロインたちが主人公に出会ってから彼を好きになるまでの速度があまりにも爆速すぎて、どいつもこいつもなんで主人公のこと好きなのか全然共感できないんだよ!

いや、理由は分かるんですよ、どいつもこいつも「スマホ太郎くんは優しい」だの「周りのみんなを幸せにしてくれる」だの、わざわざ発表会してから仲間なってくれるんですから。でも、誰も彼も原因を紐解いていけば「スマホ太郎に助けてもらったから」という同じような理由で主人公を好きになるわ、その過程の描写は驚くほど雑だわでまるで共感ができない。何か、「この状況でこんなことされたらそれは惚れるわ」みたいなのとか、「何かともに困難を乗り越えたから」だとか、なんか主人公を好きになる共感をもたせてくれるようなポイントがあればいいんですけどね。今作にはそれがない。好きになるのに理由はいらない、とはよく言ったものですが、なんの共感も得られず突然主人公好き好きされても、見ている側としてはストーリー的にクソ都合のいい女にしか見えないんです。唯一セーフなのはリーンくらいですかね。

 まあ、それだけならよくあるハーレムものの悪い点、って感じなんですが、今作はどのヒロインも主人公を好きになる理由が非常に似通っていて、後続に行くにつれてどんどん冷めてくることに加え、まあ好きになる相手が相手ですからね、「こんなやべぇ主人公を好きになって囲ってるとかこいつら頭おかしい」という気持ちがどうしても出てきてしまうんですよ。特に、4話で出てくる王族の娘、ユミナ。この子はほんと酷かった。もう爆堕ちなんて速度じゃないレベルで堕ちた上に、その理由が「人の本質見抜ける魔眼持ってて、スマホ太郎の優しさに惚れた」とかいう滅茶苦茶なこと言い出すんですもの。他のヒロインたちは、冒頭の神様とのやり取りとかを知らないからまだ許せるとしても、ユミナだけはマジで擁護不能ですよ。いや、サイコパスで頭おかしい主人公の本質、全然見抜けてねーじゃん。
 そして最後、「③展開の盛り上がりのなさ」について。先ほども少し述べたんですが、このアニメは「問題発生→解決」までのプロセス描写がとにかく雑で、何かイベントやピンチが起きたと思ったら、次の瞬間には主人公が神からもらった「常人離れした身体能力と魔導師もドン引きするレベルの天才的な魔法の才能とかいうのチート能力」を使い、なんの苦労もなく解決している場面が多過ぎてですね。展開1つ1つはテンポよく進んでは行くんですけど、その展開自体がしょーもないイベント、もしくはあってもなくてもどーでもいいようなイベントしかないんで話が進んでいるという実感はまるでなく、どの展開もなんか物凄い淡々と進んでいくため、毎回毎回ダイジェストで見せつけられているような気が私はしてしまって、あんまり楽しめませんでした。
 特に戦闘シーンでは、相手が1体の場合だと、相手の足元の摩擦なくして転ばせる「スリップ」というクソ魔法で人でも魔物でもほぼ完封相手が複数の場合だと、スマホ使って相手の位置を全部ロックし、「マルチプル」「シャイニングジャベリン」という魔法の全体攻撃で涼しい顔して殲滅という2パターンしか基本はないため、どう転んだってピンチになんないし毎回毎回展開がワンパターンすぎて飽きてくるんですよ。おまけに、主人公がその戦法を確立した時も、「あ、まあちょっとやってみるか」みたいなクソ軽いノリでやったせいでなんの盛り上がりもなかったですし、それして敵倒すたびに毎回毎回周りから絶賛されるので、見ていてイライラしてきます。

何がスリップだお前が滑れ。

 また展開でいうと、今作には魔王を倒すだとか、ヒロイン集めてハーレム作るだとか、なんとかして生前の世界に帰るだとか、そういった「最終目標」や「大目標」に当たるものが何もない、ということも、今作の退屈さを加速させている要因だと思われます。結局、最後どうなったら終わりなのか、どうなったらハッピーエンドなのかというような「終わり」の部分が見えてこないため、主人公たちが今やってることと物語の終わりとが全然結びついてこず、結果話が進んでいる実感が得られない、あらゆる展開が行き当たりばったりで発生するイベントなためずっと無駄なことしているように感じる、話が締まらない、先の展開に興味を持てない……こんな弊害が出てしまっていたのかな、と思います。
 とまあ、「主人公がなんの苦労もなく敵倒して、ヒロイン増やしながらあっちこっち出歩く」というワンパターンな展開が毎回続くので話自体にだんだん飽きてくるんですが、その点、3話の展開だけは非常に良かったと思います。3話というと、かの有名な「まるで将棋だな(苦笑)」が飛び出す回なのですが、まあAパートはずっと将棋してるだけっていういつもの異世界スマホなので置いておくとして、Bパート、これがよかった。何がよかったって、3話にして初めて主人公がそこそこ苦戦する敵が出てきてくれるんですよ。そいつは体がクリスタルでできているため物理攻撃も魔法攻撃もほぼ効かず、しかも損傷を受けても自動回復による復帰を行ってくるというまるで将棋な敵なんですが、主人公はこいつと普通に戦って苦戦し、いつものゴリ押し戦法では勝てないと悟り、何かいい手はないか、と考えに考えた結果、将棋からヒントを得て相手を見事撃破する、という、まるで普通のアニメにありそうな展開をしてくれたんです。

いつもなら戦闘シーンは、「敵出現→チート能力→撃破」、という3段階なのですが、こと3話だけは「敵出現→苦戦→考える→チート能力→撃破」という5段階を踏んでくれるので、ここだけちょっと盛り上がったと思いました。また8話のラストでも、3話で戦ったクリスタルの強敵が世界中で観測されている、という話が飛び出るおかげで、「おっ、またあいつ出てきて戦ってくれるのか!」と先の展開に期待をもたせてもらったので、ここも良かったと思います。まあ、結局影も形も出てこなかったんですけどね、初見さん。

 というわけで総評ですが、巷の噂は本当でした。クソアニメだったと思います。特に炎上するレベルで叩かれまくった11話、これはなかなかキツかったです。でもまあ、個人的には4話のAパート(王族毒味事件)の方がキツかったです。主人公の持ち上げられ方が尋常じゃなかったのでゾッとしました。もうインターバル挟まないと見ていられなかったです。

 よって、異世界スマホはクソアニメってことで、終わり! 閉廷!
  ……というのが、このアニメを視聴終了した直後の、私の正直な感想です。しかし、最終話を見終わって1日が経ち、2日が経ち……そうして時が過ぎていく内に、私の中である認識の変化が生まれ始めました。
 「このアニメはつまらないと思っていたけれど、実は私たちが間違っていたのではないか」
 こう思った原因は分かりません。しかし12話を見終わった時、というより段々イセスマの終わりが見えてくる10話入ったあたりから、あと少しでこのアニメを見終わってしまうことに対し、寂しさのようなものを感じる自分がいたんです。この「私たちの間違い」については上手く言葉で表すことがどうしてもできないのですが、なんとか書きたい、というより伝えたいと思ったので、もう少しだけ続くんじゃ。
 まず最初に思ったのは、このアニメの見方を間違っていたのではないか、ということです。具体的に言うと、私は最初、戦闘のある異世界転生モノということで、この作品のメインは戦闘シーンと恋愛シーンだというイメージを持って視聴を始めました。ですが、そもそもその認識がずれてたのではないか、ということです。つまりこの作品は、戦闘ありの異世界転生モノであるけれど、どちらかと言うと恋愛アリの日常モノに近いのではないか、そう思ったのです。
 でも、それは違いました。だって日常モノにしては主人公が気持ち悪すぎます。例えばですが、何でもいいですけれど、自分の好きな日常系アニメの主人公が言動クソ寒いサイコパスのガキになったと思ってみて下さい。しかも他のキャラは、その人のことを好き好き言ってます。
 耐えられますか? 私は無理です。よって却下。
では、と次には、実はシュール系ギャグアニメのノリで見ないといけないのでは? と思いつきます。スリップでやたらと戦闘をコミカルに描きたがるし。お前が滑れ。
 ですがこれも却下です。なぜなら、シュール系というより、シュール通り越して寒い系だから。まあ、これについては個人差あるので、これをシュールと捉えられるのなら楽しめると思いますが……私には無理でした。
 なら、一体何なのか。なぜ私は、クソクソ言いながらこのアニメを最後まで見てしまったのか。なぜ私は、Amazonでこのアニメのブルーレイの値段を調べてしまうのか。そうやって考えに考え、ネットでいろんな人の意見を読み漁ったりしていた時、私はとあるコメントに出会いました。
「女の子が可愛ければいい。シリアスなシーンは疲れるからいらない」(要約)
 このコメントを見た時、私は頭をガツンとやられたような感覚に陥りました。そしてそれと同時に、やっと私は1つの答えにたどり着いた気がしたのです。それこそが、このアニメの「真の良い点」です。
 おそらく、おそらくですが、このアニメの真の良い点「女の子の可愛さを堪能するのに脳を使わない=疲れない」ということです。
「は?」と言いたくなる気持ちは分かります。しかし、それが世界の真実なのです。ヒロインや主人公の滅茶苦茶な言動に腹立つし、見てるのも辛いから普通に疲れるだろ、というあなたの気持ちは分かりますが、ここでいう疲れないとはそういうのとは少し意味合いが違います。より具体的に言えば、シリアスなシーンがほとんどないので、とにかく気軽に見ることができる、という意味です。
 そう、このアニメはビビるくらいシリアスなシーンがありません。と言うか、私が覚えている限り一回もなかったと思います。あるのは、頭おかしい主人公と、言動に目を瞑れば可愛いヒロイン、そしてクソ寒いワンパターン展開の連続。これだけでした。でもこれって、よく考えてみると凄いことだと思いませんか?
 例えば、普通に考えてみてください。もしあなたが、「現世で死んだ主人公がスマホを持って異世界に転生し、大量のヒロインに惚れられつつ他のサブキャラにも好感を持たれ、周囲の人間を助けまくって活躍するワンクールアニメを、そこそこの戦闘シーンを入れて作れ」と言われたとします。ここで凡人が「うん、おかのした」と言って物語を作り始めたとしたら、まず十中八九、12話中に一度はシリアス展開を入れてしまうと思うんですよ。例えば、無敵のはずの主人公と互角以上に渡り合える強敵を登場させてしまうだとか、キャラの誰かが亡くなって悲しむ展開とか、主人公が生前の世界の友人や両親などに対して想いを馳せるシーンとか、主人公を取り合ってヒロイン同士が喧嘩してしまう展開だとか……とにかく、戦闘面でも日常面でも恋愛面でも、絶対にそういう展開を入れたくなるのが普通です。
 しかし、そういったシリアスめなシーンや、少し頭を使って考えさせられるようなシーンというのは、往々にして見ている側に少なからず負担を与え、場合によっては疲れを感じてしまいます。それが良いか悪いか、好きか嫌いか、という話ではなく、1つの事実としてですよ。
 ですがご存知の通り、このアニメにはそのようなシーンがマジでモノの一切見事に存在しません。先ほどから申し上げている、3話の強敵との邂逅でも、所詮は一般戦闘アニメでいう「ちょっと強い雑魚」程度の強さしかないため、見ていてドキドキするようなほどの興奮とかは全然ありませんでしたから。
 というか、そもそもこの手の「真面目な戦闘シーンあり」のジャンルの作品において、シリアスなシーンを入れずに作るのはかなり難しい
ことだと思うのです。だって通常、シリアスなシーンがない戦闘なんてほぼ間違いなく盛り上がらないじゃないですか。面白くないじゃないですか。何でもかんでも主人公が駆けつけて、何の苦戦もせずに格下の敵をボコボコにし、それを周りが絶賛するだけの戦闘シーンを毎回毎回入れるだけなんて、凡人ならまず間違いなくストップかけますよ。というか無理だよ、この設定でシリアス展開一切使うな、主人公は苦戦させるな、戦闘のたびにたいして苦戦してなくても毎回主人公絶賛させろ、とか言われたら、俺なら逃げ出す。
 
 ですがこのアニメは、そんなありきたりなシリアス展開などに逃げません
ストーリーの盛り上がりを潰してでもシリアスシーンを徹底的に排除し、戦闘も極力苦戦させずにあっさり撃破を繰り返すことであえて緊張感を取り除き「まあスマホ太郎がいれば絶対負けないだろうな」という、普通の戦闘アニメではまず避けるであろう「戦闘における絶対的な安心感」緊迫感を殺して、とにかく話が重くならないように全力を尽くしています。

だって、8話であんだけ強敵の登場を仄めかしておきながら、それまでドラゴンとかとも戦っておきながら、最終話2話前からは戦闘シーン一切なし(お遊戯模擬戦除く)で、主人公がパンツ見てヒロインたちとキスするかしないか、みんなを嫁にするかしないかで延々とハーレム問題に悩むだけの様を垂れ流し、しかもそれをクッソなーなーにしたまま終わるんですよ。こんな英断、あなたには出来ますか?
俺には怖くて絶対出来ない。

 まあその結果、主人公は思春期を殺したサイコパス少年にしか見えないし、そんな太郎を好きなヒロインどもはどいつもこいつも頭スカスカで魅力皆無の都合いい尻軽にしか見えなくなってしまっていますが、でも、それでいいんです。このアニメにおいて重要なのは、見た目が可愛い女の子たちが、動いて、喋って、頬を赤らめて、主人公に露骨に好き好き態度をとっている様子を、重たい話やシリアスな場面を全くなしにして、何も難しいことを考えずに、頭を回転させることなく、なんなら1話くらい飛ばしても問題ないくらい気軽な気持ちで見ることが出来る、ということだからです。そして今作は、それが出来るよう設計されています。
 確かに、シリアスなシーンや視聴者に考え込ませるシーンを入れれば、その分その反動で話は盛り上がりますし、キャラクターたちは魅力的に描けます。しかしそのようなシーンは、その分感情や思考を揺さぶられますし、負担になったり疲れたりしてしまいます。ですがこのアニメは、基本的に頭を使う必要はありません。見ていてハラハラドキドキしたりしない分、疲れることもありません。ただただ、見た目可愛い女の子が動いている様を「かわいい」と思いながらボケーっと見ていればいいのです。それ以外、一切の感情や思考を喚起する必要はないのです!

そう考えると、イセスマで一番面白かったのは3話だったけど、完全無敵のスマホ太郎様を多少なりとも手こずらせる敵が出てきた3話が一番クソだったのかもしれない。

 しかし、ここで大きな問題が1つ。それは、私も含めて、おそらく大多数の人間が、シリアスなシーンが来たりする事や、キャラの魅力を理解させるためのシーン、また考え込まさせられるような展開に対して労力を使うことこそが、後に盛り上がりが来た時に大きな快感や共感を感じられるため「良い」と考えている、ということです。例えば、「A、初登場の女が出てきて5秒で主人公を好きになってキャーキャー言う展開」よりも、「B、最初は主人公のことを好きじゃなかった女の子が、あるとき彼との友達関係を大きく変えてしまうようなイベントが起こり、そこから主人公を意識し始め、たくさん悩みながらも、ついに主人公に想いを伝える、みたいな展開」の方が魅力的じゃないですか。
 でもですよ、Bの場合は当然見所も盛り上がりもAの比じゃないレベルでありますし、キャラの魅力も十分に堪能できますが、その分感情をプラス方面にもマイナス方面にも大きく揺さぶられますし、頭も使いますし、疲れます。しかしAの場合においては、全くそんなことはありません。ただ、かわいい女の子がかわいい言動している様を見て「かわいい」と思う、これだけで全て完結します。そしてこのイセスマは、そのAの展開を、12話全部通してほとんどブレることなしにこれをやりきってくれるのです!
これ絶対すごいことですよ。だってあのクッキー☆だって、最後はシリアス展開に逃げたんだぜ。でも、
イセスマは逃げないよ、そんな展開には。
 確かに「イセスマは苦行」と言われる理由は分かります。というより、私もそうだと思っています。それは、当然シリアスなシーンが来るべき場面で、当然苦戦してしかるべき場面で、そろそろ最終話も近いから話を進めるべきという場面で、もうありとあらゆる場面で、こっちの要求を悉く突き返してくるからだ、私はそう感じました。しかし、もしそうだとしたら、それはきっと私たちにも責任があるのです。そもそもこの作品に、こういう「当然」を求めること自体が間違っているのです。
 ネット上に投稿されているイセスマファンの意見を見ると、この作品はストレスフリーで見られるから好き、というのがなんか通説っぽいんですが、私は最初それが理解できませんでした。だって見ていると、物凄いストレス溜まるんですもん。話は面白くない、主人公は気持ち悪い、女はテンプレ……だけど、全話見きった今、やっとその意味が少し分かったような気がします。

 確かに、このアニメはストレスフリーで見られるように設計されているんです。しかし、徹底的にストレスを与える要因(=シリアスさ)を排除しているために、それがあまりにも常軌を逸脱したレベルにストレスフリーすぎるために、私たち凡人はこのアニメを見たとき「なんで今こんなことしてんだ(話してんだ)」「なんでこんなになんの盛り上がりもないんだ」「なんで最終話前でパンツ見てキスばっかりしてんだ」という、私たちの期待や理解をすり抜けて行く事象に対して過剰なストレスを感じてしまうのではないでしょうか。つまり、私たちが、私たちの脳が、世間一般に溢れる「シリアスさ」に慣れ過ぎてしまっているがために、戦闘するアニメでありながらにしてそれを徹底的に排除されたことに対して「虚無」「気持ち悪さ」「吐き気」などを催してしまうのではないか。
 戦闘するアニメ以外で、例えば日常系アニメにおいて、女の子がかわいいだけのストレスフリーな作品というのはいくらでもありました。しかしそれは、その作品を見る前に私たちの脳が「あ、この作品はストレス感じなく見られるわ」というモードに入るから気持ち悪くないのです。しかしこのイセスマは、当然シリアスなシーンや盛り上がるシーンが挿入されるべきでありながら、それが全くないため、そのギャップに対して脳が拒否反応を起こしてしまい、結果「苦行」「虚無」「クソ」という感想が出てきてしまうのです。テンプレ展開の連続のようであって、実は冒険もののテンプレからは大きく外れている。このギャップこそがイセスマの本質なのではないかと私は思った。

 つまり、私たちは試されているのです。今まで、当然のようにシリアスさに飼い慣らされた脳を、ストレスを与えられることに慣れきってしまっている脳を、このアニメ、イセスマをきっかけにして解き放てるかどうか。シリアス展開なんて関係ない。ストーリーの盛り上がりなんていらない。それは、このイセスマに与えられた役割ではない。可愛い女の子が可愛ければそれでいい。でも、それでいて戦闘要素も冒険要素も欲しい、けれども脳を使いたくない……そんな欲張りな新人類に対して、イセスマは解答を投げつけています。
 私たちは試されています。脳に与えられた、人類史に刻まれたこの呪縛を、イセスマを見て解放するのです。
さあ、

☝️
す こ る の だ ☝️

 対局ありがとうございました。

 2期あくしろ。
【追記】
Amazonでブルーレイの1巻をポチりました。届きました。アイキャッチ集とかオーディオコメンタリーとか付いててオススメです。また、スペシャルCDも付いてる。これは買いやな。
みんなも買おうね。特に自称イセスマファンは絶対買え。俺も買ったんだからさ。
【追記2】
11話炎上問題について
 イセスマの11話炎上問題について、「11話はいつものイセスマだったのに叩かれる意味が分からない。酷い回なんて他にもあった」「4話の方が酷いのに11話だけ叩かれるのはおかしい」「ちゃんと1話から見てないにわかが叩いてるだけ」等の意見を結構見かけるので、これについて私なりの考えをちょろっとだけ追記します。
「11話より4話の方が酷い」に対しては概ね同意ですが、「11話はにわかが叩いてるだけ」説に対しては、私は完全に真逆だと思います。まあ、話題になって11話だけ見に来た新参が大量に沸き、面白がって便乗叩きしだしたのは事実ですが、むしろ11話は、最初からちゃんと見てきた人間こそが完全に心を折られるからこそ話題になったのだと思います。
 つまり11話は、最終話一歩手前の11話であるからこそ炎上したのではないか、と思うのです。3話や8話でフレイズの存在が脅威となりそうな雰囲気を出しておきながら、10話が水着休憩回&遺跡発見により11話で大きく話が進みそうな雰囲気を出しておきながら、通常であれば最終話の締めに向けて大きな盛り上がりを作るべきであるはずの11話という超重要なポジションにいながら、それでいて良くも悪くも何の盛り上がりもない「いつものイセスマだった」、だからこそ11話は炎上したのだと思うのです。だって、ここまで見てきた人間が、3話や8話の展開に多少の期待感を持っていた人間が、
「あ、そうか。もしかしたらいつか面白くなるかも、と思って見てたけど、最終話に向けてすら盛り上がり作るとか話進めるとかそういう気一切ないんだこのアニメ」ということを気付かされてしまうん
ですよ。そういう期待をイセスマに持ってなかった人間はほぼ無傷かもしれないですが、そうでない人間は11話で大きなショックを受けます。プラス、最終話に対しての興味を喪失します。
 だからこそ、多くの人間が11話でショック死したのです。私もしました。これが例えば8話とか9話のお話であれば、ここまでのことにはならなかったと思います。
 でも、展開単体で見れば、やっぱり4話が一番クソだったと思う。
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