「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

インバージョン 転移 のデビューです(総合評価C+)

(画像:Amazon商品ページより引用)
ゾンビもの? とはまたちょっと違う、ホラーともサスペンスとも言い難い、なんともジャンル分けしにくい映画でした。マジで困ったので、とりあえずホラーに分類しておきます。
あと、ボケーっと片手間に見てると間違いなく置いてかれるので、見ると決めたら結構腰据えてちゃんと見た方がいい映画だと思った(小並感)
 さて、レンタル版を吹き替えで視聴しました。まずはAmazon先生のあらすじ&予告編からどうぞ。
【予告編】
【あらすじ】
「スクリーム」シリーズのプロデューサー、ケイリー・グラントが放つスパイラルシチュエーション・ホラー。見知らぬ部屋で意識を取り戻したアダムは、記憶を失くしていた。壁には「思い出せ」というメッセージ。やがて記憶が甦り始めるが…。(あらすじ:Amazon商品ページより引用)
ストーリー………C
キャラクター……C
設定………………C
総合………………C+
オススメ度………C

【良い点】
・中盤以降は謎や展開がどんどん動いて行くため、興味を持って見続けていられる。
・発想や設定自体は攻めが効いてて面白い
 
【悪い点】
・ストーリーがとにかく分かりにくい&回想とか記憶を辿るシーンがかなり長いため、特に序盤は結構退屈
・面白い設定なのに、それを掘り下げ切れていない
 設定的には、結構攻めてて面白い映画だと思います。少なくとも他の映画にはないような強みを、こいつは充分に持っていました。ただし、序盤は回想シーンばかりで話が進まないように感じられるためダルかったです。中盤以降は、回想を辿ることが意味を持ち始めたため飽きずに見ていられました。しかし、全体通してストーリー自体は結構分かりにくかったので、ボケーっと見たい時に見るのはお勧めしません。
【以下、ネタバレ注意!】
 ガバ集合知くんきらい。
 さて今作ですが、血だらけで記憶喪失の主人公が奇妙な山小屋で目覚め、そこに残されている情報や手がかりを基にして自分が今置かれている状況を探って行く、というストーリーになっています。しかも、今作は一応ウイルス感染系の映画です。ゾンビではないですが、感染者が襲ってきたりします。こわい。

 そして、主人公が自分の過去の記憶を思い出すことはもちろんのこと、主人公の頭の中にはなぜか全く知らないおっさんの記憶もあるため、これらを思い出す行為がストーリー展開に深く関わってくることになるのです。これが今作の、良くも悪くも1番の特徴だったと思った。
 ではこれを踏まえて、今作の評価を。まずは良い点から。今作の良い点は、中盤以降は飽きずに見られるということと、設定がなかなか攻めていて面白いということでした。
 まずは中盤以降の展開について。序盤についてはとりあえず置いておくとして、今作の中盤からの展開はなかなか良かったと思います。序盤にだるすぎるくらいに時間を使って丁寧に張りまくった伏線や、提示してきた謎を解く鍵が、中盤以降はさらなる思い出し行為によってどんどんと紐解けて行くので見ていて退屈しませんでした。
 何より、序盤は過去の記憶を辿ったり自分の行動を思い出したりするシーンばっかりで、現在世界での話が全然進まないためかなりかったるく感じたのですが、この過去を思い出す行為、過去に遡る行為こそがこの映画のストーリーであり肝であるのだと中盤以降は理解出来てくるため、そうなって来るとこの映画に対するイメージがだんだん変わってきます。
 思い出すこと、ないし他者の記憶を共有することが、今置かれている状況の把握や、その解決の役に立って現在世界での謎が解けていき、また別の問題や疑問に対して過去の記憶を辿っていく……このプロセスが確立されてくるのが、だいたい中盤からなんですね。序盤は基本的に思い出してばっかなんで。
 それはさておき、この、過去に向かって遡る行為こそがこの映画のストーリーそのものである、という発想、それ自体なかなか攻めがきいてて面白いのですが、自分の記憶だけではなく他人の記憶も辿れるということや、ウイルス感染者同士は集合知へのリンクを通して記憶を共有できること、すなわち、感染者の方が人間よりもより高度な存在となれることなど、全体的な設定が割ときちんと練られており、それに基づいてストーリーが構成されていたのは好印象でした。
 では、良い点は以上です。続いては悪い点を。今作の悪い点は、序盤がだるいということと、せっかくの設定を有効に生かしきれていないということです。
 まずは序盤のだるさ。先ほどから良い点でも申し上げているとおり、この映画の良い点である「記憶を遡ったりして過去に向かうことこそがストーリーの肝である」ということが確立されてくる中盤に入るまでは、はっきり言って結構ダルかったというのが第一印象。

何より、記憶をなくして謎の山小屋に閉じ込められている状況からスタートする序盤は、いわずもがな回想シーン、また他人の記憶を共有するシーンが長くなり、もう山小屋内での状況がちっとも動いてくれないため、「やたらと回想が長い映画」という印象しか最初は無かったです、正直。しかも、キャンプ先で出会った女の子とイチャイチャするという、一見本編に何も関係なさそうな回想シーンに結構尺使ったりするので、余計に。

 まあ、これら序盤の回想シーンも、物語が進むにつれてちゃんと意味を持っていることが分かってくるのですが、そうとは知らずに見ているだけの間は、割と辛かった記憶があります。
 しかしまあ、これについてはまだ良いんです。序盤ダルかっても、中盤以降にそれらのシーンがちゃんと意味を持っていることが分かってくるので救われる。問題はむしろ、設定が結構面白い割に、それをきちんと生かしきれていないことにこそあると言うべきでしょう。
 今作はウイルス感染ものでありながら、感染者の方が人間より上位の存在(自称)に位置付けられていたり、感染者は皆、集合知というものへのリンクによって記憶の共有ができたり、またウイルスのその性質を逆手に取り、主人公自身が集合知へのリンクと他者との記憶共有を活用して活路を見出したり……など、設定を活かした展開にしようという意気込みは感じられます。
 しかし、例えば「で、結局集合知ってなんなんだよ?」ってこととか「集合知って言うけど、お互いの記憶がつながるだけじゃなくて、つなげた感染者たちを導いてる高位存在的なヤツがいるんだけど結局そいつは何なんだよ」ってこととか「集合知は完璧至上主義とか言いまくってるくせに、人間の完全上位互換(自称)のはずである感染者がどう見ても記憶共有と引き換えに頭わるわる~になってるのおかしくない?」ってこととか、ぶっちゃけかなりの疑問を残したまま本編終了と相成り申すため、なかなか後味スッキリとはいかないのが今作の残念なポイント。
 また、主人公が折角記憶共有の能力に目覚めたのに、それを有効に活用したシーンがほとんどない、というのも非常に、非常に残念なポイント。唯一有効に使った場面といえば「心臓止まっても電気ショックすれば生き返ることがある」とかいう小学生レベルの知識を他人の経験から引っ張ってきただけ、というのが、ハッキリ言って興ざめでした。この設定はもっと活かせたはずであるだけに、非常に残念に思いました。
 というわけで総評ですが、中盤以降の面白さと設定の斬新さに支えられて飽きずに見ていられるけれども、序盤はなかなかにツラく、また設定も上手いこと活かしきれていない部分が目立ち、総合的にC+くらいに落ち着きましたとさ、という感じの映画でした。B−にしようか悩みに悩んだんですが、まま、ええわ。ということでこうなりました。しかし結構良く出来ててなかなか面白いので、気になる方は見てみてください。しかし、ちょっぴしストーリーが難解なので、頭わるわる~、な状態でボケーっと映画見てたい方にはあまりお勧めできないです。
 というわけで、今回のレビューはここまでとなります。ご視聴ありがとうございました。
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