「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

【凡作】映画えんとつ町のプペル 完走した感想です

 お疲れ様です、当ブログ管理人のさがんです。年末年始は風邪引いてぶっ倒れてました。お久しぶりでございます。

 さて今日はですね、「興味はあるんだけれど原作者にカネが入るのが嫌だったので劇場に見に行かなかった人が最も多い映画」として有名()な、あの「えんとつ町のプペル」がついにアマプラにやって来たため、昨年の大晦日の夜に1人で見た時に感じた率直な感想をつらつらと書いていこう、的なやつです。

※個人の感想です

 そして最初にお断りしておきますが、このプペルという作品は、「信者とアンチが異様に多い映画」「絶賛しても酷評しても何処かしらから刺される映画」として名を馳せている()ため、今回はちょっと表現をオブラートに包んでお届けしようかと思います。それでは早速行きましょう。

※個人の感想です

①基本情報

(画像:Amazon商品ページより引用)

あらすじ

一年前、この町でただ一人、紙芝居に託して“星”を語っていたブルーノが突然消えてしまい、ブルーノの息子・ルビッチは、学校を辞めてえんとつ掃除屋として家計を助ける。しかしその後も父の教えを守り“星”を信じ続けていたルビッチは町のみんなに嘘つきと後ろ指をさされ、ひとりぼっちになってしまう。そしてハロウィンの夜、彼の前に奇跡が起きた。ゴミから生まれたゴミ人間・プペルが現れ…。

Amazon商品ページより引用)

 と言うわけでこちら、あの「オンラインサロンの人」こと、キングコング西野さん原作の映画です。本人曰く、この映画で「ディズニーを超える」と言う事らしいです。
 まあ実際のところはともかく、志が高い事自体は非常に素晴らしいですよね。

②視聴した感想

 率直な第一印象を申し上げますと、「酷評するほど悪くはないが、絶賛するほど面白くはない」というもの。と言うのもこの映画、ネット上の評価を見ているとかなり極端な評価が目立ちます。具体的に言うと、「○回泣いた」「〇〇を超えた」などに代表される、原作者の西野信者による露骨な絶賛、もしくは、とにかくどうあっても悪く言ってやろう、という気概満々の西野アンチによる酷評の二極化が目立つ、という印象です。

 個人的には、原作者のイメージに映画の評価を引っ張られるのはなるべく避けたいので、西野氏の顔とプペルの売り方に関する黒い噂などを極力忘れた上で、なるべく純粋に一つの映像作品として楽しもうとした結果、出た感想が先ほどのものになります。

 それではここからは、私がプペルを見て感じた良かった部分と悪かった部分に分けて、話を進めていきたいと思います。

良い点
・映像が綺麗
・キャラクターの出来はなかなか

悪い点
・シナリオや設定が薄っぺらい

 まずは良かった部分ですが、映像の綺麗さとキャラクターの作り込みですね。

 映像については、さすが「ディズニーを超える」と豪語するだけあってなかなかクオリティが高いです。特に、作品のテーマが「星」なだけあって、星空の描写はかなり気合が入っていることが伺えます。まあ、このクオリティがディズニー越えかどうかはともかくとして満足できる水準には十分達していると言えるかと思います。

 咥えて、キャラクターのクオリティも子供向けアニメ映画としては充分ではないでしょうか。何よりも、主人公のルビッチとプペルの2人をはじめとして、印象にしっかり残るキャラクターが多いです。自分はアニメ映画に限らず、人名を覚えるのが滅茶苦茶苦手なのでキャラ名までは覚えてない人が多いんですが、勝気で息子思いのカーチャンだとか、なんかジャイアンみたいなガキ大将ポジのやつとかが好きでした。特にジャイアンは、「なぜ星を見たいと願うルビッチに異様に反発するのか」が最終盤でしっかりと明かされ、しかしそれでもひたむきに頑張るルビッチとプペルを見て、自分も勇気を持って一歩を踏み出す、という描写が、「あぁ〜こういうのベタだけどすこ〜♡」となりました。基本的に今作、キャラの掘り下げに関しては結構上手いと思います。

 さて、これでシナリオや設定もバッチリなら、自分も無事に西野信者の仲間入りしてオンラインサロン加入不可避だったわけですが、残念ながらそうはならなかったん。その理由は、今作はとにかくシナリオや設定など、作品の骨格たる部分が非常に薄っぺらく感じたからです。

 まず、物凄くざっくりと今作のあらすじを申し上げると、『父の死後もその言葉を信じて、煙で一杯の空の上には星があると信じる少年ルビッチと、突如ゴミの山から生まれたゴミ人間のプペルが出会い、2人で友情を育みながら、なんやかんやあって星空の証明に成功する話』です。これだけ聞くと、ありがちながらもなかなかまとまりの良いあらすじに聞こえますが、実際のところはかなりゴチャゴチャととっ散らかった内容になっています。

 そうなっている大きな理由として挙げられるのは、「①プペルたちを追う異端審問官の行動理由がクソ」「②ルビッチの星空を見るための努力がクソ」なこと、この2点です。

 最初に触れるべきなのは、異端審問官の存在。今作の舞台となるえんとつ町には、異端審問官という公的機関があります。これは、「なんか気に食わん存在」「なんとなく異物っぽい存在」を勝手に認定して公権力でそれを物理的に排除すると言う、なんとも中世ヨーロッパチックな組織。そしてこいつらは作中で、『ゴミ人間』というバチバチの異端者であるプペルを捕らえようと暗躍しています。

 それ自体は、「ルビッチとプペルの友情を引き裂こうとする障壁」として機能しているんで別にいいんですけど、この異端審問官の行動理由が「ゴミ人間はなんか異端っぽいから」という、物凄い弱い理由なんですよね。

 このせいで、この映画の前半パートのほとんどは「異端審問官とかいう悪いやつらに追われるプペルをルビッチたちが守り、友達になっていく話」がメインになっちゃっており、1番肝心であろう「星を見る」という作品のメインテーマが完全にそっちのけにされてしまっているんですよ。このため前半部分は、異端審問官という敵対組織を動かすことで、プペルとルビッチをはじめとしたキャラクター同士の交わりや掘り下げをやっているばかりで、物語の終着点である「星を見る」という最終目標に向けては、話が動いている感覚がまるでないのです。だって何もしてないんだもん。これがまず何よりいけない。

 もちろん前半部分でも、ルビッチがプペルとかに「いやー父親が星はあるって言ってたから、自分もあると思うんだよね」「みんなは笑うけど、星は絶対あると思うんだよね」的な夢を語り、そのたびにあっちこっちからバカにされまくる、という流れをそれはもうしつこく何回も何回も繰り返す、という描写はあります。西野さん的に言うと、これは「夢を語ると皆に笑われる」ことを示唆する描写だと思いますけれど、これの繰り返しがもう本当にしつこい。「もうその流れは分かったから、とっとと『星を見るためには、具体的にどうするか』の部分に話進めろや」と思わずにいられなかった。

 そしてここから、②ルビッチの星空を見るための努力がクソ、という話に繋がってきます。彼が前半パートで起こす星を見るための行動といえば、「毎日煙突に登って、煙だらけの空を眺めているだけ」という、星空に間抜け面を晒して受動的に成果を待つだけの無能極まりないムーヴくらいで、夢を実現するための具体的な努力を一切していないのです。当然、そんなんで星なんて見えるわけないわな。

 そんで後半は後半で、プペルと喧嘩してみたり、なんだかんだ仲直りしてみたり、そんで急に「あっ、そや! 空の煙を火薬で吹き飛ばそ」と思いついて、特にこれといった苦労もなくポンポンポーンと準備を進めて即実行、上手くいきましためでたしめでたしちゃんちゃん、という具合なので、まっっったく話が盛り上がらない

 つまるところ今作は、前半〜中盤部分は「見るからに怪しいプペルが異端審問官に追われ、ルビッチがそれを助けたりして友情を育む話」がメインで、終盤になってやっと「星見る方法思いついたから試して上手くいく話」に移っていく、という具合に構成されているため、内容に一貫性がなくテーマがブレブレなのです。

 いやさぁ……この物語って、「星なんてないと嘲笑われながらも、ひたむきにそれを信じた人が報われる話」なんですよね? 実際原作者の西野さんも、「夢を語ればたたかれるこの世界を終わらせに来ました」と発言してますし。でも実際ルビッチは、「大した努力もせずバカみたいに口開けたまま、ただチャンスが転がり込んでくるのを受動的に待ってるだけ」のゴミ人間みたいな行動しかしないわけですよ。

 いや、そりゃ笑われるよ。だって目の前に「俺はどうしても一流の漫画家になるんだ!」って言いながら、一日中部屋にひきこもってダラダラと漫画読んでるだけの人間いたらどう思います? 笑うでしょ? 「いや、漫画家になりたいってんなら、同時に漫画を描く練習もちゃんとしろよ」と言いたくなるでしょ?

 普通に考えてですよ、とりあえずプペルが異端審問官に追われる理由を「星を見るというタブーを犯そうとしているから」とかにしておけば、『ルビッチとプペルが出会い、2人で協力して星を見るという夢を叶えるためにあれこれ試す。その噂を審問官が聞きつけ、それを止めにやって来るものの、なんとか退けながら最終的に夢を叶える』という流れに出来て良かったんじゃないか、と思うんですけどね。そうすれば、最初から最後まで一貫して「星を見るという夢を叶えるために頑張る話」というぶれないテーマを設定できつつ、一方で「2人の友情を引き裂こうとする障壁にも立ち向かっていく話」という側面もしっかり描けるし、いいことづくめだと思うんですけど──

 あとはまあ余談に近いんですが、「腐る通貨と中央銀行」とかいう、本編に一切関係ない、何の伏線にもなっていない題材をポンっと放り込んでそのまま放置するところとかはマジでイラッと来ました。こういうのは「ちゃんと世界観考えてますよアピール」以外何の役にも立たない制作側の自己満ノイズ情報でしかなく、ぶっちゃけ言ってただの邪魔。そんな感じで、他にも細かく文句言いたい部分はいくつかあるんですけど、長くなるので割愛します。

 というわけで、私が「うーんこの映画微妙だなぁ」と思った大きな理由については、だいたいこんなところです。「プペルとの友情」を描きたいのか、「信じる夢を叶える話」を描きたいのかがブレていて、かつそれぞれどちらも掘り下げが浅く、全体的に内容が薄っぺらくなっている、という感じです。

 これを「一粒で二度おいしい」と捉えるか、「どっちのテーマも中途半端で掘り下げ不足」と捉えるかは見る人次第ですが、少なくとも私は後者です。もっとシンプルに、「星空を見るという夢に向けて突っ走る話」を堂々とメインに据え、その中で「プペルと友情を育む」というのをサブテーマ的立ち位置で盛り込んでやれば、全体的にまとまりがあって良くなったと思うんですが……。

 まあともかく、普通に出てくる分にはそれなりな映画なんですけど、

「この映画はディズニーを超えた」

「○○回泣けた」

「まさしく魂の代表作」

 みたいな顔して出されたら、

「うーん、これは過言w」

 と言わざるを得ない、そんな程度のクオリティの作品でした。まあいくらなんでも、これでディズニー越えは無理かな──さすがに2プペ目はNo thank youです。

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