「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

「100日間生きたワニ」を見てきた感想。誇張して過度に酷評されすぎているが、どう考えても普通に凡作だろ枠

お疲れ様です。さがんです。
今日はですね、今Twitterその他各界隈で話題沸騰中の映画、100日間生きたワニを見てきたので、その感想をネタバレ込みで語る感じのやつです。
100ワニについては今更説明不要だと思うので、かっ飛ばします。一応、映画版公式サイトで全漫画が読めますので、よろしければそちらをどうぞ。

(画像:映画.comより引用)

100日間生きたワニ 公式サイトはこちら

映画を見た率直な感想(ネタバレあり注意!)

 まず第一印象は、「意外としっかりと映画していてびっくりした」でした。エンディングにたどり着いた時に、マジでその感想しか出てこなかった。

 と言うのもこの作品、前半は原作でやっていたとおり、ワニが死ぬまでの100日間を映画用に再編集して流し、そして後半部分ではワニが死んだ後の残された者たちの日常を、カエルくんという新人キャラを交えて展開していく、と言う内容になっており、(起伏にはかなり乏しいものの)しっかりとした起承転結が存在するためです。かつ、作品全体のテーマ性と言うか、この映画でやりたいこと、表現したいこと自体はドストレートに伝わってくるため、マジで「いや意外とちゃんと映画してんじゃねぇか」という感想がまず出てきたわけです。

 しかしもちろん、手放しに絶賛できるような内容ではありません。全体通して目につく部分、粗い部分は実際かなり多く、面白いか面白くないかで言うと面白くない寄りです。特によく言われるように、後半に出て来る新キャラのカエルくんが、これがもうとにかくウザったらしい性格をしており、皆からやんわりと避けられているのにそれを無視してガツガツと人の心の中に入り込んでくるようなクソ野郎なので、こいつが登場した瞬間は「なんだぁ? てめぇ……」となりました。こっちはワニが死んで、それを悲しむみんなの様子を眺め、一緒に追悼するかのような空気になっていた所に突然のウザキャラ登場ですから、人によってはこの時点でかなりの苦痛を感じてもおかしくないです。というより、無神経極まりないこのキャラの存在自体が、あの100日炎上騒動に被って見えてくる部分もあり、結構ツラかったです。

 その後、実はこのカエルくんはカエルくんで辛い過去を抱えており、それを乗り越えようと必死に振る舞っているらしいことが示唆されます。そんな彼の様子を自分に重ねたネズミくんは彼を受け入れ、そうやってワニの死を乗り越える契機となる、的な展開へとなっていくのですが、この部分がもう物凄い駆け足、かつとんでも無くあっさりしすぎているため、心に響く間も無くエンディングになるなどの問題も。見ていて、「え、これで終わり?!」ってなった。

 また、そもそも100日ワニの魅力、評価されていた部分って、「作品の内容自体はありきたりで普通だが、SNSで100日間配信し続けるという特異な連載形式の斬新さ」が評価の大半を占めていたと思うので、その斬新さを取り上げて、一本の映画としてワニが生きてから死ぬまで、そして死んだ後の話へと繋げ、無難に起承転結を付けた結果、内容自体が恐ろしくありきたりで平凡になってしまっている、と言うことも残念な部分に挙げられるでしょう。要するに「ある日突然友人が死に、それを機にバラバラになった仲間たちが、外部から来た新人への対応を契機にまた繋がり直す」と言うだけの話ですからね。プロット自体はもう恐ろしくありきたりで平凡すぎるのです。

 初見でもある程度話が分かるように、という配慮からか、はたまた前半パートを長く見せることで、あの時SNSで毎日ワニを追っていた頃の気持ちを思い出してもろて、という配慮からかは分かりませんけれど、個人的には「前半パートに原作の内容詰め込んで、後半でオリジナル展開」とやる今の構成よりも、いっそ原作未見は完全に切り捨てて前半パートは全カット、ワニが死ぬシーンから初めて後半部分をじっくり描写とかの方が、まだ映画としては面白かったかな、と思います。原作展開もオリジナル展開もどっちも、と手を出した結果、どっちの部分もスーパー中途半端になってる感は否めない。

 その他、前半の日常部分が端折りすぎて100日の情緒もクソもなくないとか、端折ってる割にテンポ悪いよねとか、まあその他思うところはちょこちょこあります。しかし、もう致命的にここがダメ、と言えるほどの部分、あったか? と思わずにいられない。もちろん好き嫌いはあるでしょうし、後半部分、というかカエルがマジで死ぬほど嫌い、と言う人がいるのはよく分かるのですが、Twitterなんかで見られるような、もう鬼の首をとるように面白おかしく酷評されるほどの映画じゃ全然ねぇな、というのが率直な感想でした。

 というより、今作に対しては「つまらん」「面白くない」「駄作」「カエル死ね」等の正常な批判を超え、「もう内容いかんに関わらず何があっても叩いてやろう」というような、ただただ悪意のある感想がかなり目につく印象を覚えます。例えば、「見る五億年ボタン」だの「この映画を見た後はどんな映画も素晴らしく見える」だの「見る拷問」だの「史上最低」だの──いやいやお前、こんなスーパード凡作程度の出来のこの映画を捕まえて、そんな最上級のクソ映画に対する侮蔑みたいな言葉を使ってるとか、本気で言ってるんならガチで感性を疑うし、あまりにもクソ映画というものを舐めすぎだと思う。

 実際私は、それらの感想に対してキレてます。何がムカつくって、100ワニを汚されたことに対してではなくて、今作を見に行く前にそういう「ネタバレなしで今作を面白おかしく叩いただけの感想」を読んで「いやぁ、これはさぞ酷いもんが見られるんやろなぁ」心躍らせてウキウキで劇場に行った結果、なんてことはない凡作程度の作品を見せられた裏切りに対してですよ。いやさぁ、あっちこっちで酷い酷い言われてるもんだから、こっちとしてはクソなのを期待して、言わばウンコが食いたくてわざわざ1,900円払ったわけですよ。それなのに、出されたのはなんてことない、その辺によく転がってる平凡なレトルトカレーだったわけです。

 おう、面白おかしく今作を貶してたボケども、この気持ちが分かるか? お前らのやっていることは、ウンコ食いたいって願望を持った純情な心を持つ人々を騙して、レトルトカレーを食わせた最低な行為だぞ。あの劇場に行く前の、「今日はどんなウンコが食えるんだろう」って純粋な、ワクワクした気持ちを返せよ。こっちはウンコ食いに行ったんだよクソが!!!

 まあ、そもそも映画を見に行く時に、クソなことを期待して行ってんじゃねーよ、と言われればそれまでなんですが、今作に関してはやはり、叩き方が異様すぎると言うか、正当に評価していない声がかなり大きい印象を受けます。100ワニ相手なら、どんな内容になっていようと好き勝手言っていいだろ、っていう空気。私自身、100ワニは100日目の炎上を契機に死ぬほど嫌いになった人間でありますが、そんな自分の目から見ても、どう考えても今作は、ここまで酷評しまくるほどひっでぇ作品ではないと思う。まあ、だからと言って面白くはないわけだが。

 まあただ、このワニの映画を見にくる人の中には、あの100日目の炎上を受けて「見に行って好き勝手叩いてやろう」という姿勢の人が多く見にくることは容易に予想できたはずで、そう言う人たちに対して圧倒的なクオリティを示し、「叩く気で見に行ったけど、素晴らしかった……」と言わせるほどの内容は持ち合わせていない、というのは今作の明確な欠点です。ストーリーの稚拙さや作画など、叩く隙を作ろうと思えば作れてしまうようになっているのも良くない。

 現に私も、どれだけクソなのか見に行ってやろう、という気持ちと同時に「もしかしたら思いもよらぬ傑作に仕上がっているかも」という一縷の望みを持って足を運んだのですが、残念ながら今作、良くも悪くも無難な起承転結の物語にこじんまりと収まってしまっており、絶賛も酷評もできない、という一番良くないやつになっちゃってます。そういう言う意味では、期待外れの作品であると言わざるを得ません。残念ながら、劇場まで足を運んで高い金払って見るほどの価値がある映画ではないと思うので、レンタルか配信待ちで良いのではないでしょうか。

 しかし、賢明な皆様にはどうかネット上に溢れる誇張に誇張を重ねた、単なるレトルトカレーをあたかもウンコであるかのように誤解させるような優良誤認表示的な感想に騙されることなく、お過ごしいただければと思います。

 それでは今回はこの辺で。見に行ったと言う方、コメントお待ちしております。

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