「どんな映画にも、きっと良い点がある」をモットーとして、主にB級映画のレビューや紹介、おすすめ等を淡々と書いてゆくブログです。

【オラ夏】クレヨンしんちゃん オラと博士の夏休み クリアした感想を語る枠。ぼくなつを期待する人は様子見が吉かも

(画像:Amazon商品ページより引用)

 皆様お疲れ様です。管理人のさがんです。
 今回はですね、いつもの映画の話題──ではなくて、今ちょっと話題のゲーム「クレヨンしんちゃん オラと博士の夏休み 〜おわらない七日間の旅〜」をクリアしたのでそのご報告と、せっかくなのでその感想を軽く語る感じのやつです。よろしければお付き合いください。

 さてこのゲームなんですが、実は発表された時から結構話題になっていました。それはクレしんのゲームだから……というわけではなく、そのゲームデザインがあの名作ゲーム「ぼくのなつやすみ」を彷彿とさせるからだったのです。

 とりあえずここで、PVを見てくれ

 PV 

いや、これもうぼくなつだろ。
という事で、一躍話題になりました。実際、このゲームの開発にぼくなつシリーズの監督が関わっておられる事もあって、一気に期待が高まります。
そして先日、堂々の発売日を迎え、私も早速買って来てプレイしてみたわけなんですけど──

 先に結論から言います。言いたいことはいろいろありますが、一言でまとめると「キャラゲーとしては良作だが、ぼくなつを期待するとガッカリする」。そんな所感でした。

 いやマジで、クソゲーだとか駄作だとかここが致命的にダメだとか、そういうことは全くもって全然なく、良い点もしっかりあるんですけど、それにしたってあらゆる要素が数歩ずつくらい物足りない。かつ、細かい不満をあげだすとものすごい量が出てくる。そんな感じです。だから、「良い部分もちゃんとあるけど、それ以上に不満が多すぎてキツい」っていう感想に落ち着きました。ここからは、じゃあ何が良くて何がダメだったのか、それをかいつまんで解説していきます。

 なお、ストーリーの重要なネタバレ等にはなるべく触れずに書きますが、細かいネタバレ等はどうしても含んでしまうため、これからプレイする、という方はご注意ください。
 また私自身は、クレヨンしんちゃんは毎年公開される映画を見ている程度のファン。そしてぼくのなつやすみについては、2と4をやった程度のファンです。そのため、以下のレビューではクレしんのゲームとしてああだこうだとか、ぼくなつの雰囲気がどうこうだの偉そうなこと言ってますが、あくまでライトファン目線のものだと割り切ってお読みください
 そして、私はこのゲームを一周軽くやっただけで、図鑑コンプしたりとかイベント全部見たりとかまではしていません。そこまでやった方とは、評価が大きく違う場合もあるので、この点もご容赦ください。
それでは参りましょう。

良い点

  • ゲーム全体の雰囲気が素晴らしい

悪い点

  • ストーリー構成が雑
  • 恐竜バトルが残念ゲー
  • 虫取り、魚釣り等の収集要素が薄味すぎて収集欲を掻き立てられない

 はい、悪い点については特に気になった点を挙げてみましたが、ぶっちゃけこのほかにも不満はまだまだあります。例えば流石にボリューム少なくねとか、例えばフルボイスじゃないとか、例えば画面切り替え時に操作ミス頻発する作りになってることとか、例えば時間経過の概念があるんだから体力ゲージいらねーだろとか、例えばマルチエンディングじゃない一本道ゲーなので、ストーリー読まさせられてるだけの気分になるだとか……でも、いちいち全部あげてるとキリがないので、今回は特に気になった、この3つに抑えました。

 では早速。まずは良かった部分から。これについては絶対的なものがただ一つ、ゲーム全体を取り巻く雰囲気がマジで素晴らしいということです。

 今作はぼくなつを彷彿とさせるスローライフアドベンチャーなわけですけど、PVを見てもらってもわかる通り、ゲームデザインというか全体的な雰囲気はPVどおりでマジで素晴らしいです。まず何より、背景やステージの描き込み、作り込みがすごくて、世界観にグッと引き込まれる。透き通るような青空に、流れる川、遠くに見える山々など、本当に凄く良い雰囲気が滲み出ていて、まさに夏休みを満喫している感が抜群に堪能できます

 また、固定カメラの俯瞰視点というゲームシステム上、上から見下ろすような視点もあれば、あえて引きのカメラで遠巻きにしんのすけを描写する場所、橋を渡る様子を下から見上げるように映す場所など、面白い視点の場所がたくさん採用されていて、いろんな角度からアッソーの大自然を満喫できました。また、昼間ももちろん良いんですけど、夕焼けの景色も本当に綺麗なんだこれが。

 そして、ゲームが進むにつれてマップがどんどん解放されていくんですが、「次の場所はどんなところなんだろう」というワクワクが毎回詰まっていて、かつその期待に応えてくれる美しい視点がてんこ盛り。ここの部分はまさにPVどおり、大変に満足できました。

 今回、良い点にはここの部分だけをあげましたが、この部分ってこのゲームの根幹であり、田舎の夏休みを満喫するという意味での1番重要な部分だと思うので、ここがしっかり作り込まれている、というだけでもゲームとしての評価はかなり上げていいんじゃないかと思います。極端な話、「歩くだけで楽しい」をしっかり実現できている、と思いました。今回、私はこのゲームに対して残念に感じた部分が多かったのですが、それでも今作のことを嫌いではない1番の理由は、ここの魅力をしっかり堪能できたからに他ならないと思っています。

 というわけで、良い点以上。続いては特に残念だった点を。それは3つ。ストーリーの雑さ、恐竜バトル、そして収集要素がなんとも薄味すぎること。

 まずその1、ストーリー。ですが、ストーリー内容自体は、究極突き詰めると好みの問題になってくると思いますし、発売されたばかりのアドベンチャーゲームのネタバレをするのも気が引けるので、詳細なネタバレは避けます。ですが、ここだけは特に言っておきたいことをピックアップ。

 まず1番気になったのは、メインストーリー中に野原一家やかすかべ防衛隊(今作の設定上はアッソー防衛隊)の面々がほとんど関わってこないことです。毎年出るクレしんの映画だと、だいたいの場合は野原一家orかすかべ防衛隊のどっちかに焦点を置いたお話になることが多く、今作を買った方の中にも「このアッソーの大自然とクレしんのキャラクターたちがどう絡んでくるのか」を楽しみにしておられた方も多いと思うんですけど、大変残念なことに今回のお話はプレイヤーキャラであるしんのすけ以外マジで空気です。野原一家は、日中仕事へ出かけるひろし以外、拠点となる食堂内からほとんど出てこず、ストーリーにほぼ関わってきません。シロも犬小屋に繋がれっぱなしで、パッケージ写真のように一緒にお出かけして、的な機能もなしと、この点はマジで残念でした。普通に、シロを連れまわしてお出かけしたかった……。
 またアッソー防衛隊のみんなも、一部関わってはくるものの、例えばみんなで一緒に冒険に出かけたりとか、行く先々で個別会話が発生したりとかもほとんどなく、大変に印象が薄いです。まあ、全イベントクリアしたわけではないので、もっと濃いサブイベントもあったのかもしれませんが……。
 まあ、ゲームタイトルが「オラと博士の」になってはいるので、その他の面々はおまけ程度の登場だと割り切るにしても、せめて野原一家くらいはちゃんと絡めてほしかったなぁ、と思います。

 他には、初めて街に恐竜が現れた時の反応はじめ、なんか「まあこんなもんでいいか」な投げやりな感じのイベントが結構あって、いくらクレしんだからってことを考慮したとしても、全体的に話の繋ぎがすごい雑に感じたのも覚えています。「町に初めて恐竜が現れて、みんな大仰天!」→「普通に就寝」の流れは、さすがにバグってなんかイベント飛んだのかと思った。窓の外にブラキオサウルスいるのに寝られるわけないだろ! まあ、気になる気にならないは人によると思うので参考程度に。

 それでは次、恐竜バトル。これはぼくなつで言うところの虫相撲に該当するミニゲームなんですけど、超簡単に説明するとムシキングです。もっとわかりやすく言うと、ジャンケン。プレイヤーは1体の恐竜と、その能力値を底上げするカードを選んでフィールドに出し、ジャンケン勝負する、的なやつです。
 これを使い、秘密基地と呼ばれる場所でアッソー防衛隊の面々と勝負する事になるんですが、これがまあ面白くない。その理由としては、ゲームシステムがガワを整えただけの単なるジャンケンなので、結局ただの運ゲーだから燃えない、と言うことももちろんあるんですけど、それ以上にデカイのが一つ。それは、育成要素が一切ないからなのです。

 どう言うことかと言いますと、この恐竜バトル、使用できる恐竜はストーリーが進むにつれてどんどん解放されていく仕組みになっているのですが、この子達を戦わせて経験値を集めるだとか、集めたカードとかを使って強くしていくだとかの、育成的な要素が一切ないんです。かつ、このバトルで使用するのは単なる恐竜のロボットという設定で、しかもそのロボット自体も別に自分の所有物ではなく単なる借物であるので、言ってしまえばこれに全然愛着が湧かないんですよ。

 ぼくなつの虫相撲だと、自分で野山を駆けずり回って頑張って捕まえたカブトムシやクワガタを試合に出して経験を積ませ、またいろんな技を覚えさせ、かつ自分でニックネームをつけたりなんかもしちゃえるため、「自分が頑張って育てた最強の虫をバトルさせる」という、子供心をくすぐる滅茶苦茶に熱い設定でした。そんな虫を使って勝った時の喜びはすごく大きかったですし、育成も自分だけの最強の虫を育てている感があってやり甲斐があり、また何よりも虫集めをする大きなモチベーションにもつながっていました

 ですが今作の恐竜バトルは、悪く言えば「他人に借りたカード使って劣化版ムシキングやっているだけ」な上に、自分が集めたり育てたりした恐竜を使うわけでもないため、まったく盛り上がりません。強化カードも1枚だけしかつけられず、かつ攻略上ド安定である全能力アップ以外のカードは基本ゴミなので、強化カードを組み合わせて自分だけの色を出す、的な楽しみ方が出来るわけでもないと、これはマジで「虫相撲やらせてくれ……」としか思えなかった。そしてこの話が、事項の「収集欲を掻き立てられない」という話につながってきます

 最後、収集要素の残念さ。前述の通り、今作はぼくなつライクなゲームデザインであるため、当然魚釣りや昆虫採集などの要素もあります。ありますが、ここに期待するとガッカリすると言わざるを得ません。

 まず、魚、虫ともにサイズの概念がないため、大物を捕まえるぞー、的な楽しみ方ができません。1匹捕まえて図鑑を埋めたら、2匹目以降は捕まえる意味がないです。一応、「何匹捕まえる」系の目標を埋めたりだとか、お小遣い稼ぎクエストの「同じ魚を何匹納品する」的な項目を埋めるため、と言う意義がないでもないんですが、それにしても収集欲を掻き立てられる作りとは程遠いです。

 特に虫については、ぼくなつのように捕まえた虫を虫相撲で闘わせたりする場があるわけでもないため、初見捕獲時の図鑑埋め以外の使い道がなく、かつ捕まえたことのない虫は露骨に光っているという仕様があるため、「道を歩いていて光ってる虫がいたら網を振り、それ以外はガン無視」という、大変面白みのない残念な仕組み。サイズの概念がないという仕様も、2匹目以降を集める気にならないという心情に拍車をかけてきます。

 また魚についても、お小遣い稼ぎの対象として魚を何匹納品する的な依頼が多々あるので、最初はそれ用に頑張って釣りしてたんですが、そもそもこのゲーム、まともなお金の使い道がほとんど存在しないため、魚釣ってまでお金を稼ぐ意味がガチでないです。序盤は頑張ってお小遣い貯めてたんですが、中盤になって「いやこれ金貯める意味なくね?」と気が付いてからは、マジで依頼を放置してた。結果これも、図鑑埋めくらいしか楽しめる要素がなく、サイズの概念もないため被ったら残念な気分になるだけ、というガッカリ仕様。

 とまあ、ここまで長々と語ってきたんですけど、結局今作の残念な部分を突き詰めていくと、「ぼくなつを期待してたが、期待したほどじゃなかった」ということに突き当たると思います。これ、ぼくなつ的な視点を一切抜きにして、子供向けの単なるクレしんのキャラゲーとして見れば、かなり作り込まれていてなかなかの良ゲーだとは思います。まあ、ストーリーに野原一家絡んでこなかったりとか、絵日記の口調がしんのすけっぽくないとか、クレしんのキャラゲーとしても言いたいことはまあまああるんですけど──それでも「キャラゲーという地雷量産機」のフィールドで戦うなら、ゲームシステムをここまで作り込んである今作であれば、充分良ゲーとして通用すると思います。この辺はマジで、「ドラえもん のび太の牧場物語」と同じような感想でした。あちらのゲームも、単なるドラえもんのキャラゲーとしてはちゃんと作り込んであるんですが、じゃあ牧場物語として面白いかと言われると物足りないよな、という──うん。期待が重すぎたのかもしれない。

 まあ今作、そもそもドラえもんとは違い、ハッキリとぼくなつシリーズの作品ですよ、と明言しているわけではないのですが、まあぶっちゃけ誰がどう見てもぼくなつを意識しまくって作られていることは明白であり、かつゲームをプレイしていてもぼくなつチックな演出が多々ある(ラジオ体操、絵日記、ご飯の集まり、メニュー画面の構図、定点俯瞰視点によるキャラ操作、その他ゲームシステム全般)ため、どうしたってプレイ中にずっとぼくなつがチラつくんですよ。そしてそうなると、ぼくなつで出来ていたこと、魅力に感じていたことが出来なくなっているので、「うーん物足りない」と言う感想になってしまうのでした。いっそ、ぼくなつっぽさを排除したゲームデザインならまた感想は違ったと思うんですけど、それだと確実に買ってないので、これも難しいところ。

 と言うわけで、これが今作を完走した後の率直な完走だったのですが、重ねて申し上げますけれど今作、決してクソゲーだとか駄作だとかではありません。こんだけダメ出ししといて何言ってんだ、と思われるでしょうが、マジで田舎の大自然の雰囲気周りが最高というだけでも十分に楽しめるゲームとなっています。それこそ、地雷蔓延るキャラゲーの中では結構よく出来ているので、あまり深く考えずにダラダラゆっくりやるくらいがちょうどいいと思います。ボリュームも少なめなので、そういうプレイスタイルでもさっくり終わりやすいのも個人的には悪くない部分。ボリュームについては物足りないと言う声が多く聞こえますが、何十時間、何百時間とやり込むゲームももちろんいいと思いますけど、こういうさっくり終わるゲームももちろんあっていいと思うので、これはこれで悪くないかな、と個人的には思います。まあそれにしたって、イベントとかはもうちょっと欲しかったと思いますし、普通にやって10時間かからない程度の作品にフルプライスは高い、という意見も理解できるので、それはご自分の趣向と相談していただければよいかと思います。

 ただし、やはりぼくなつと比べ始めてしまうと至らない点が多い作品なので、「とにかくぼくなつみたいなゲームがやりたい!」と期待する方は、少し冷静になって様子見でいいと思います。逆に「ぼくなつほどガッツリやりこむつもりはないので、軽くやってさっくりクリアできるくらいが丁度いい」という方には、結構おすすめのゲームです。

 それでは長くなりましたが、今回はこの辺で。このゲームやったよ、と言う方がいらっしゃれば、是非感想などお聞かせください。お金、滅茶苦茶余りませんでした? 俺の知らない使い道あったりするんですかね?

 では、ご視聴ありがとうございました。

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